第7話


「よっし!じゃあちゃっちゃかフィールドに出れるくらいまでレベルをあげちゃおうっか。」


「はいっ!師匠!!」


「むぅーー。師匠じゃなくってミーシャと呼んでちょうだい。(師匠だなんてかたっ苦しいじゃない。仲良くなりたいのに・・・。)」


「はい、ミーシャさんっ!」


「ん。よろしい。」


オレは街から出てレベルをあげるためにまずはレベル5になるまでゴミ拾いをすることになった。


ちなみに石以外にも、落ち葉を拾ったり缶やビンを拾ってもExpやお金が増えることがわかった。


しかも缶やビンなどNPCやプレイヤーが捨てたゴミを拾うとより多くのExpとお金が手に入ることがわかった。


つまり町中のゴミを綺麗にすれば相当レベルが上がるはずなのだ。


もしかすると今日中にレベル5まで上がることができるかもしれない。


そう思ってミーシャさんと一緒にゴミ拾いにせいを出している。


と言ってもミーシャさんはゴミを拾ってもExpもお金も増えないので見ているだけだ。


「(それにしても面白いシステムを考えたものね。いったい誰だろう。でもわざわざゴミを拾うなんてこと考えるプレイヤーはいないだろうから盲点っていったら盲点なのよねぇ。)」


「ミーシャさんっ!これはなんでしょうか?」


「ん?なんか面白いものを拾ったの?」


ゴミを拾って分類しているとどこに分類していいのかわからないゴミともわからないものが出てきた。


それは虹色に輝くガラスの破片のようにも見えた。


綺麗だからゴミとは思えないが、ただ破片となっているので使い道がないようにも思える。使い道がないということはゴミだろうか。


オレには判断がつかないのでミーシャさんに聞いてみることにした。


「こ、これは・・・っ。」


ミーシャさんがオレが持っている虹色の破片を見てごくりと唾を飲み込むのがわかった。


なにやら重要なものなのだろうか。


「ど、どうしてこんなものがこんなところに・・・。」


少し焦っているようにも見えるミーシャさん。


いったいどうしたというのだろうか。


「どうかしたんですか?」


「あ、いいえ。ものすごいものを拾ったなと思って。これはね、異性にプレゼントすると好感度を一気にあげることができる幻のアイテムなのよ。」


「は、はあ?」


異性の好感度をあげるアイテム・・・?


でも、プレイヤー相手に贈っても意味ないだろう?


ゲームの中では効果があるだろうけれど、現実のプレイヤーには効果がないだろうから好感度をあげるもなにもないだろう。


もしかして、NPC相手ってことだろうか?


「よくわかっていないようね。じゃあ、私が説明するわね。このキャッティーニャオンラインでは恋人を作って結婚することができるのよ。でも、恋人になるための条件があって、それが好感度よ。好感度は相手との会話数やプレゼントによってアップダウンするわ。そうして、プレイヤー同士が恋人になりたいと思っていても好感度が低ければ例えプレイヤー同士であっても恋人になることはできないのよ。」


「な、なるほど・・・。」


「それがね、鬼畜仕様でね。しばらく会わなければ好感度は駄々下がりするわ。他のプレイヤーとの会話率が増えれば好感度が下がっていくわ。キャッティーニャオンラインが公開されてからしばらく経つけれども恋人になったプレイヤーは数えるほどしかいないのよ。」


「そ、そうなんですか。」


なんか異様に鬼仕様だな・・・。そんなに恋人を作らせたくないのか、このゲームは?


「それを解決するのがこの『虹色の輝石』よ。これを相手に渡せばすぐに好感度MAX。恋人になれるわ!!」


ミーシャさんが熱弁を振るっている。


どうやらミーシャさんはゲーム内で恋人をゲットしたかったようだが、できなくて苦労していたようだ。


そんなに重要なアイテムならこれを売ったら高値がつきそうだ。


でも、無職で低レベルのオレに付き合ってくれているミーシャさんがこんなに恋人を欲しがっているのに、このまま売るっていうのも気が引ける。


それならば、ミーシャさんにこれをあげて、ミーシャさんの好きなプレイヤーに渡せばいいだろう。


そうすればミーシャさんも晴れて恋人ができるではないか。


「ミーシャさん。あの・・・よければこの虹色の輝石をどうぞ。」


「えっ!?私にくれるの!!」


オレがミーシャさんに虹色の輝石を差し出せばミーシャさんの頬が上気した。


どうやら相当嬉しかったようだ。


喜んでくれるなら何よりだ。


オレはミーシャさんに虹色の輝石を手渡した。


「あ、ありがとう。私、とっても嬉しいわ。これからもよろしくね、エンディミオン様。(これで私も恋人ゲットよーー!)」


はしゃいで虹色の輝石を受け取ったミーシャさんの笑顔がとっても眩しかった。


ミーシャさんいい人っぽいしな。


ミーシャさんに恋人ができてもオレとはパーティー組んでくれるだろう。


なんとなく短い付き合いだけれども不思議とミーシャさんは約束は違えない人のように思えた。


そのミーシャさんが選んだ恋人なら、オレのこともパーティメンバーに入れてくれるような気がするし。


うん。


きっとオレいいことした。


「えへへ。えへへへへ、えへへへへへ。」


ミーシャさんが嬉しさで笑っているのは気にしないことにする。


「初めての恋人だぁ・・・。うふふ。エンディミオン様ももちろん初めてだよね?」


頬を染めてこちらを見つめてくるミーシャさんに思わずオレ早まったかも、と思ったのは秘密だ。


「あーうん。オレも恋人いないよ。ゲーム始めたばっかりだしね。」


「そっかー。そうだよね。嬉しいなぁ。ねね、エンディミオン様。恋人になると友達一覧に恋人って表示されるんだよ。知ってた?」


「え?オレ恋人いないから知らなかった。そうなんだ。」


「うん。見てみてよ。」


「え?でも、オレ恋人いないし・・・。」


そう思いながらも、ミーシャさんの押しが強くて友達一覧を確認するしかなかった。


そしてそこには目を疑うような表示がされていた。


「えっ?ミーシャさんが恋人・・・?」


どうやらオレがミーシャさんに使って欲しくて手渡した虹色の輝石は、そのままオレとミーシャさんの好感度を上げたようだった。


そうして何故か恋人に・・・。


特に恋人になるという選択肢もなかったのにも関わらずオレたちは恋人同士になっていたようである。



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