第2話 人類の限界

 自己紹介で触れたように、僕の書き物は全て携帯で作られる。

 だからいつでもどこでも、時間があればちょちょいと書き足せる。


 安物ブルートゥースキーボードは一つのキーが壊れてお蔵入り。

 調子良く打っているのに一つのキーだけ反応しないと腹も立つし調子が狂う。しかも持ち歩きが面倒。


 結局今どきの女子高生のように、携帯のキーを高速連打、という訳にもいかず、ポチポチとぼちぼち文章を打ち込む。

 歩みは遅いが、これで四十万字を超える小説だって書くことができた。

 取り組んだことがなければ、そんなのは絶対無理だと自分も思ったはずだが、達成してみるとできるもんだなあとなる。

 うさぎと亀ではないけれど、ゆっくりでも進めていれば、そのうち五十万文字でも百万文字でも書くことができる。

 もっとも、自分が生きていればという前提。


 新聞の文字数がどの程度かご存知だろうか。

 四十ページ程度の朝刊で、五十万文字くらいあるらしい。毎日五十万文字のペーパーを発行するというのは、想像するだけで気が遠のく。


 つまり、あの小さな字がぎっしり詰まった新聞と似た字数を携帯で書いているのだから、我ながら凄いなあと思う。

 しかし実際、血の滲むような努力をしているわけではない。

 嘘だと思う方には、トライしてみることをお薦めする。


 時代は変わった。こんな小さなコンピュータが、一人一台。我が家は五人家族で五台。中古も入れると家の中に何台の携帯があるのか分からない。

 少なくとも自分の書棚には、アイフォン7の完動品が骨董品のように置かれている。


 今使用しているのはサムソンA50。安いのにハイスペックで軽いから気に入っている。

 携帯で文章を書く人にとって、重量は重要だ。もちろん軽量であるほどよい。


 昔はアップルなんて、一部のマニア向けパソコンだった。アップルとは、なんて安直なカンパニーネームなのだろうと思った。

 しかし今や、リンゴマークを持ち歩くのは一つのステータス。


 対抗馬として出たアンドロイドは不具合が多くて使い物にならんと思った。

 それが今や自分はアンドロイドファン。もうアップルには戻れない。


 それにしてもロムが128Gって、何だよ。

 自分が初めて使ったノートパソコンは、ハードディスクが80Mだと自慢できた。周りからも凄いって言われた。

 そんなにあるの! ってな具合で羨望の眼差しで見られた。

 当時の値段は四十万円。

 

 それが今や、三万円くらいの小さな携帯端末で128G。(因みに1024M=1G)

 朝刊新聞が五十万字として、全角一文字2バイトとすると、大体1M分の容量。

 128Gって、一体何に使うのよ、って世界。

 それを誰もが持ち歩いている。我が家の六歳児までもが。


 世の中、変わり過ぎだろうと思う。

 一年間に製造される携帯電話数は十五億。

 携帯電話十五億個分の材料を想像してみて欲しい。毎年莫大な材料が用意され、それをタンカーやトラックで運び、電気を使い組み立てる。

 莫大な資源を使いせっせと作り、ユーザーは数年でそれを買い換える。

 膨大な経済循環になっている。循環にはロスがつきまとい、サイクルを回すほどお金は回るが資源的なものは失われていく。


 これで地球はもつのだろうか。

 そしてもし携帯が人体へ著しい害を与えることが証明され全面使用禁止にでもなれば、一体何人の人が失業するのだろう。


 因みに世界人口は七七億。直に八十億を突破する。

 増え続ける人が食うため、携帯電話産業は随分世の中に貢献しているのだろう。

 反面コロナは、爆発的に増え続ける人口への神の警鐘ではないかと思えたりもする。


 一度何かのバランスが崩れると、とんでもないことが起きそうな気がしないでもない。

 昨今、人類の限界が見え始めているのではないだろうか。


 こんなことが小説のネタにならないか、などと考えているうちはまだまだ平和だろうけれど。

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