第7話「転機 後編」

「あの…」俺は興蔵さんに話しかける。



















「俺、少し前に唯香に話しかけられた感覚がしたんです。それも、唯香と出会った夏祭りの舞台で…

姿は見てないですが、なにか話してきた感じがしたんです…」と伝えた。


















「唯香はなにか言っていたのか?」


















「『妹を…妹を守って』と言っていた気がします」




















興蔵さんは無言で泣いていた。







そして俺にこう言った。







「…唯香、死ぬまで唯波のことを…考えていたんだな…あいつ…人のことばかり考えて…自分を見失うことがあったんだよ…それでも…毎日…唯波のことを…考えていたんだな…」


















唯香は凄い奴だった。誰に対しても優しく、臆することもない奴だった。言われてみれば、俺は唯香のそんなところに惹かれて、告白したのだと思い返した。


















「…唯香、凄いな…」















それ以外、なにも言えなかった。

















あれから数ヶ月が経った。

もう4度目の「春」が来る。

















そして…


























いつか「返って」来ることを俺はまだ知らない。


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