第5話「余談話 夏は過ぎてゆく」

唯香がいなくなってから3回目の夏を迎えた。


確か、唯香に告白したのも夏だったと思い出した。








3年前…










「…あのっ!、ぼ、僕と…っつ、付き合ってください!!」

なんとも情けなく聞こえる告白に、

「…はいっ…喜んで!」と返してくれた唯香。

そこから恋は始まった。

たった数ヶ月で終わりを迎えるとは知らぬまま

恋が始まった日。近所の神社の夏祭り。







そして3年が経つ。もう君はいない。






それでも君と出会った夏祭りに1人で行く。







「思い出に会える、そんな気がしたから」







夏祭り当日…

謙吾と少しだけ屋台を回った。

俺が学校以外に外に出ることは久しぶりだった。





「どーよ、楽しいだろ?たまには外の空気も吸えよ」謙吾はそう言ってくれた。



謙吾にはお世話になった。唯香が死んだ後、色々慰めたり励ましたりしてくれたのも謙吾だ。

親友は、1人は持つべきだと実感した。







…数時間後

謙吾と別れてから、ひとりで君と出会った場所に行く。君がいそうな感じがしたから。













案の定、感じだけだった。



当たり前だ

唯香が死んだ所を自分は見たのだから。










「…いないかぁ」

嘆いても仕方ない、と思った刹那、













「君のことを忘れてないよ、ずっと」












聞き慣れた声、いや、3年間聞いてなかった声










「唯香…?、唯香っ!」

いない彼女の名前を口にする、でももういない。

当たり前だ。


















そして、唯香はもう一言、脳裏に話しかけてきた。


















「妹を…」















そこで途絶えた。




















俺には全く理解できなかった。






















気がつくと、もう夏祭りは終わっていた。


長く、そして短い出会いの架け橋は、とっくに終わっていた。
















そして、冬になる。














あと、数ヶ月。










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