占い結果がくっころ

ここはドエス帝国。

帝国の名称がドエスなのにはそれほど意味はない。

この国を支配する女王がちょっと加虐嗜好が過ぎたため

ついちゃった名であるから大丈夫なのだ。


帝国内に立派な神殿がある。

帝国でも有名な占い師がいる神殿だ。

女王は国の行く末や戦争の仕掛け時、

あるいは手頃ないたぶりがいのある玩具探しの時など

占い師に占わせている。


占いは結構当たる。

その確率にしてなんと脅威の二分の一。

故に女王からの信頼も厚い。

占いが外れてしまえば占い師は女王からのお仕置きが待っている。

占い師が女王に向ける信頼も熱い。


そして今日も国の大臣が占いをするよう女王から命令されてきた。

大臣の顔には鞭で打たれたような痣が。


「ンィ~リゥ~プォーゴンァ~マ~…」


祭壇の前で一人の男が何やら呪文を唱える。

齢88歳。ふんどし姿でなんか木の棒を両手で持って左右に振っている。

木の棒の先端にはなんかこう白い紙が、ひし形の紙が繋がってるあれが付いてて

一振りするたびにフォアさァと音を立てている。


そして老人占い師の全身にはやっぱり鞭で打たれた跡が生々しく残っている。

もう誰がやったとは言わない。


「ンィ~リゥ~プォーゴンァ~マ~ンィ~リゥ~プォーゴンァ~マ~ンィ~リゥ~プォーゴンァ~マ~ンィ~リゥ~プォー!ゴンァ~マ~ンィ~リゥ~プォー!ゴンァ~マ~ンィ~リゥ~プォーゴンァ~マ~…」


占い師が呪文を唱え続け…


「!!」


カっと目を見開いたかと思うと祭壇に捧げていたお供え物の

マンゴープリンに顔を近づけ口で、んじゅぞじゅぞずると吸い込んで

噛まずにそのまま飲み込む――


「神のお告げじゃぁあ!!」


占い師の言葉にごくりとつばを飲み込む大臣。


「破滅の神託なりィ!!」

「!?」


破滅の神託。この世界では千年に一度くらいやべーことが起きる。

実際歴代の占い師が占ったこの破滅の神託で起きた事態は

世界が滅びかける程やべーことになってしまっていた。


大臣もそのことは知っていた。そして過去の破滅からたぶんもうちょいで

千年たったっけあれどうだったっけという心境でドキドキしてたが

やっちまった。

やっぱりもうちょいで千年の破滅周期が回ってきたのだ!!


「 く っ こ ろ ! ! 」

「!?」


――くっころ。

聴き慣れぬ単語に戸惑う大臣。

占い結果が――くっころ。

そして占いジジイは神託の内容を伝える。


「千の時を超え現われしは、混沌の申し子なり!

 子は報われぬ愛を求め、世を乱し!

 破滅へと導くであろう!!」


千の時を超え――間違いない。

千年に一度のやべー事がやはり起きるのだ。

混沌の申し子というのがその元凶。

それによって世界は――滅びる。


「しかして!!」


占い師が叫ぶ。

さっき食ったマンゴープリンが口から出てきたじゃん後で拭いとけよ。


「くっころ!!すべてはくっころ!!

 くっころこそ、その災厄を退ける!!」


――くっころ。

なんということだ。世界の命運はそのクッコロにかかっている!!

急がなくては!!このことを女王様にお伝えしなくてはァア!!


慌てて立ち上がる大臣。

神殿を転げ落ちるように出ていき

馬を走らせ、女王が待つ王宮へ急ぐ。


ぜいぜい息を切らしながら王の間まで走ってたどり着き

勢いよく大きな扉をひたく大臣――


「女王様ッ!!大変でございます女王様!!」


大臣が叫ぶ様子を玉座から頬杖をついて見る女王。


「申してみよ」


その一言に大臣は跪き――


「申し上げますッ!!」


占いジジイの破滅の神託を伝えた。

そして世界の命運はくっころにあると。


「ほお」


世界の破滅と聞いて全く動じない女王。

むしろその笑みはこれから訪れる破滅を楽しみたいと言わんばかりだ。

女王は世界に知られる戦好きの王。

いかなる戦いも避けたこともなく仕掛けた戦いは全て勝利している。

女王は破滅でさえ力でねじ伏せようというのだ。


「——して、大臣よ」

「はッ」

「くっころ、とはなんぞや」


「——あ」


そういえば慌てて出てきたので占いジジイにくっころの詳細を聞きそびれてしま―


「この無能がァア!!」

「あひぃいい!!」


女王が大臣の顔面目掛けて鞭をふるうぅ↑


「大臣、貴様わざとそのくっころの事を確認しなかったなァア?」


わざとでした♡


「よかろう。この女王、後で占いクソジジイに直々に聞いてやろう。

 その後でジジイには好きなだけ我が鞭を浴びせ食らわせてやる。

 さて大臣。まずは貴様からだ。褒美をやろう――」


「ああ女王様!褒美などもったいなきお言ヴぁんぎひぃいいいい!!」


この後めちゃくちゃ鞭で打たれた大臣。

今日も帝国は平常運転だった。

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