くっころ牧場なんていかがでしょう

魔王城の地下深く


薄暗い闇の空間に数多くの小部屋


部屋には番号が振って在り


中には――捕らわれた女騎士たち


そう、ここは牧場――


女騎士たちが――いや家畜同然の人間のメスが


その命が今日までなのか明日までなのか


震えながら生かされていた――


13と番号が付いた部屋の扉が開く…


『…ひっ…!?』


部屋の中には鎖につながれ怯える女騎士


その様子を見下す――魔王。


『や、やめてぇえ!ころさないでぇえ!!』


『違うだろ…?』


女騎士の口元を片手で乱暴につかみ上げる魔王


『貴様はそんな言葉を我にかけるためにここにいるのではない…』


『んん!?んんんんんんッ!!』


手に込められる力が女騎士の恐怖を掻き立てる


ここで魔王の機嫌を損なえば待っているのは死よりも悲惨な結末


『耳をすませてみろ…聞こえるか…?』


魔王がささやくと、隣の部屋から女の悲鳴が


―いや!やめて、そんなのいやぁああ!!―


きっと魔王の機嫌を取り損ねたのだろう


―お願い助けてぇえ!なんでもするからぁあ!それだけは―


必死に懇願する悲痛な声が響き渡るが


―いやぁあああああああああああああああああああああ―


急に静かになる隣の部屋


次は――自分の番――


『…さあ。言ってみろ』


魔王を満足させる言葉を。


女騎士はそれに――答えるしかなかった――


『…く…こ、ころ…せ…』


魔王の求める呪文を唱えた女騎士


『駄目だな』


が、魔王には効かなかった。


『な、なんで!?』


『貴様のくっころには絶望がない』


くっころといえば命だけは助かる…そんな淡い希望がにじみ出ていたのだ。


『残念だよ。13番』


『待ってお願いします!!もう一度!!もう一度だけ機会を!!』


しかし魔王は振り向かない。


『もういい。貴様の相手は――』


扉がいびつな音を立ててゆっくり開く――


『ひっ!?』


女騎士の視線の先に――


『こいつが遊んでくれるだろう』


身長3Mを超える、ガタイのいい屈強な


メイドが――立っていた――




「 誰 だ よ 」


途中まで黙って聞いていたが堪えかねて突っ込む執事。


「いきなり新キャラ出すな。いないだろそんな屈強なメイド」


「だぁまってろアホ毛メガネ!これからがいいところなんじゃい!!」


鼻息荒く魔王に提案(?)を続けるメイド。

本当にうるさい。だから前髪きれよ。


「そして女騎士は屈強なメイドに!!

 無理やりメイド服を着せ替えさせられてぇえ!!

 魔王のメイドへと堕ちていくのでありましゅ魔王しゃまぁ…!」


「なんでメイドを増やすんだよ」


「人手不足なんだよこの魔界ご時世はなァア!!」


いちいちキレ散らかすメイド。

我が魔王軍は深刻な人手不足だったのだ。


今魔王城にいるのは、魔王、執事、メイド


以上。


深 刻 な 人 手 不 足 だ っ た 。


「いらんだろメイドの数なんて。しかも人間の」


「てめえ!!この魔王城の掃除をだれがやってると思ってんだ、毛!!

 一日かかってやっと城の窓ふきが終わるんだぞ!!

 床の掃き掃除から雑巾がけは次の日やるんじゃこちとらァア!!

 鳥に餌やってる暇あんなら手伝えや、毛ェ!!

 そのほかにも魔王様の朝昼晩の食事のご用意もあるんじゃ!!

 てっめぇえは草でも食ってろや毛ぇええああ!!」


俺を毛で呼称すんな前髪。


「苦労を掛けるな、メイドのメイよ」


「あひぃ、しょんないいんれす魔王しゃまぁあ!

 しょのお言葉だけで十分れすぅう…!」


魔王様の一言にじゅわじゅわ溶けだすメイド。

しかし前髪はとけない。


「ま、雑用に人間を使うのは賛成だ」


「ようやく気が合ったようですね。さようなら」


メイドと執事は仲が悪い


「人員確保…名案だ、メイドのメイよ」


「ま、魔王しゃま!?」


褒められてまた溶け出すメイド


「しかしなメイドのメイよ」


魔王が残念そうに


「魔王城に――そんなに立派な地下が、ないのだ…」


地下を掘る人員が必要だった――

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