第29話 真実2
新宮は虚ろな目でうわごとにように呟いた。
「全部私の勘違いだったんだ。私の勘違いでリョウを呪ってしまった」
海藤は正直事情はよくわかっていないが、そんな新宮を見ていられなかった。
新宮の肩をポンポンとたたく。
虚ろな目だが、海藤に焦点があった。
「新宮さん、俺、正直今の状況分かってないのだけど、これだけは言える。君の思いは成就する。彼にきちんと気持ちを伝えておいで」
海藤は飛びっきりの優しい声でそう伝える。
海藤の記憶はそこで途切れた。
ふっと目を覚ますと朝美が顔を覗き込んでいた。
海藤は見回すと新宮はどこにもいなかった。
「どうだった?」
ニヤニヤと朝美は聞く。
「何かよくわからないけど、古代ローマみたいなとこに行った夢を見たみたい。そこにいた男の人が見た目は全然どこも似てなかったけど、何か朝美に被るとこあったよ」
ふむふむと少し腹立つ反応の朝美を見て、現実世界なんだなと海藤は感じていた。
「もう一人男がいて、なんだかとても親近感が沸いたのだけど、おそらくあの男がきっと、俺の祖先なんだと思う。心が病んでるように見えたけれど、
聞いていた話しとは違ってて、
彼は女神を裏切ってないと思う。どう見ても彼は女神を愛してた」
朝美は今度は静かに海藤の言葉を聞いていた。
「新宮さんは何でだかわからないけど、俺の祖先のことをすごく好きだって伝わってきた。すごく狼狽えていだけれど、多分思いは成就すると思う。だって俺、新宮さんのこと好きだから。きっと成就する。
というか、成就してほしい。今こそ俺の呪いが役にたつときだよね」
穏やかに笑う海藤を見て、朝美は、複雑な心境になりながら肩をポンポンと叩いた。
朝美は静かに思う。
どうして、この男は生まれ変わってもまた、自分よりも人のことを考えられるんだろうと。
そして、その性格こそが自分が彼に惹かれる理由なのだと。
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