第27話 過去

よくよく男を見てみると整った顔立ちで、

体型も彫刻のような綺麗な筋肉をもっていた。

身長も海藤より10センチ近く高く、隣に並ぶと

コンプレックスばかりが、刺激されそうで気配を消して、後についていくことにした。

新宮の表情は強ばっている。

対して目の前の男は鼻歌を歌っている。

性別も顔立ちもちがうが、何故か朝美とダブるところがある。

ある建物の前につくと、男は手で窓側の方にまわるように指示を出してきた。

男はドアをノックする。

ドアは力なくあいて、中の人物が男を招き入れた。

建物のなかにいた人物は先ほど出会った男と同じくらいの年のか細い男だった。

その男を見た瞬間になんとも言えない気持ち悪さと、懐かしさに襲われた。

恐る恐る新宮を見るとハラハラと泣いていた。

海藤は察した。この優男こそ新宮の想い人だ。


中の声は思ったよりクリアに聞こえる。

「リョウ何で、あんなバカなことをしたんだ!」

先ほどの男は優男にむかって、そう怒鳴っていた。

優男リョウは力なく答える

「ごめん。でも、これでカオの気持ちは僕しか見えない。もう愛されないのならば、呪いでも何でも僕にだけ感情をむけてくれるのが嬉しい」

優男は海藤の目にはすごく病んでいるように見えた。

先ほどの男はなおも叫ぶ。

「お前はバカすぎる。そんなことよりもきちんと話せば女神さんだってわかってくれるはずだろ?

お前が喜んでいるその呪いは間違いなく数年でお前を蝕む」

「それでも、僕はこれで間違ってなかったと思う。

カオのまわりには僕よりも賢く、優しく、強い村の者が囲んでいる。いつしか二人の時間は全くなくなってしまったし」

新宮はリョウの言葉にはっとした顔をしていた。

海藤は自分のみが蚊帳のそとで、少し複雑な心境であったが、何故だか他人事には思えないでいた。

そして、はっとする。

もしかしたら、このリョウというのは、

自分の遠い祖先なのではないだろうか。

そう考えてみれば、一致するの内容はたくさんある。

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