第26話 過去へ

白い光を見た気がした。

気がつくと、先ほどまで目の前にいた朝美は姿を消していた。

それだけではなく、校舎があったはずの場所は、

歴史の教科書で見たような、古代ローマのような建物がある。他にも小高い山も。

夢を見ているのかと思って周りを見回すと

先ほど会ったばかりの新宮が倒れていた。

海藤は新宮を揺する。

新宮はパッと目を開けると目の前に海藤がいたことによってビクッとした。

「目は覚めたかな?新宮さんがいるってことはこれは夢じゃないんだよね?」

海藤は極力優しい声で語りかける。

「何をバカなことを、いってるんだ!」

先ほどまでとはうってかわり、新宮はいつもの調子に戻り、海藤にきつくあたったが、

海藤の後ろの光景が目に入ると、思わず息を飲んだ。

「本当に」

新宮がそう呟いたが、そこから先は言葉が出ずに、一筋の涙を流した。

海藤は訳もわからず、新宮の涙に動揺する。

「本当に過去に戻ってきたんだ」

新宮の言葉と今の状況に海藤は頭を悩ませていたが、

遠くからすごいスピードで走ってくる男を見つけ、思考することをやめた。

そのスピードも去ることながら、海藤と目があっているにもかかわらずその男は全くスピードを緩めない。

そこにあったのは、恐怖だ。

あと数センチでぶつかるというところで、男は綺麗に止まった。

新宮を見つけるとその男は

「来たのか?」

不思議な問いかけをした。

しかし、新宮は小さく頷く。

「久しぶりだな。女神さん、今から俺はあいつに会いに行く。だから外で隠れてあいつの話を聞けばいい」

海藤は存在を無視されていたが、新宮の真剣な表情に静かにすることにした。


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