第24話 物語は進み始める
無理矢理な朝美の説明だったので、
海藤は朝美の適当な返事だと思っていたが、
それから毎日新宮は当て馬部に顔を出していた。
顔を出しはするが、一向に海藤と打ち解ける気配はない。
頼みの綱である朝美も陸上部の助っ人を頼まれて、全然顔を出さなくなった。
つまり当て馬部の部室に海藤と新宮は二人きりである。
依頼者が来ると朝美のときは退出してもらってたが、新宮のときは普通に同席していた。
依頼者に許可を取ると、みんな瞬間的に頷いてくる。少し神がかっててこわいが、これがカリスマ性というやつか。
毎日顔を合わせる中で新宮は海藤に対する想像がずれていたことに気づいていた。
海藤は顔がいいし、適当に色んな女の子と遊んでると思っていたが、 全くといって関わりはない。
当て馬部に来た依頼者にだって紳士的である。
朝美の言うとおり、生まれかわった海藤は少し不憫だった。
それでも間違いなく生まれ変わる前の自分は傷つけられたのだ。
海藤の顔を見るとどうしてもきつく当たってしまう。
新宮は海藤に尋ねた。
「何でこんなことをしている?」
海藤は緊張していた。
「もとはといえば、朝美の思い付きだけど、
今となったらやってよかったとおもってる。色んな人たちの相談にのってあげられるし。新宮さんも何か悩みあったら聞くよ」
海藤はできるだけ、優しく話しかける。
新宮はギャップに混乱しつつもどうしても怒りが押さえきれない。
「とても好きな人がいたんだ。だけど裏切られた」
新宮の口から出た言葉は軽く海藤をえぐった。
「詳しく聞かせて、俺おそらく役にたてるよ。」
傷ついている海藤の表情など新宮は気づかずに、尚もイライラしている。
「なんでそんなことを言えるんだ?」
海藤はすっとうつむいて言葉を紡ぐ。
「新宮さんからしたら、バカみたいな話と思うかもしれないけど。俺の一族には呪いがかけられているんだよ。一番好きな人から愛されないという」
新宮は大きく目を見開いた。いま、海藤はなぜそんな話をしているのか?
その呪いについては自分がよくわかっている。いかに強い呪いかも。
新宮のその表情を海藤は誤解していた。
「バカにしてくれても構わない。新宮さんの力になりたい。」
とても小さな声で海藤は告白した。
「はじめて会ったあの日から俺は新宮さんが好きなんだ。だからね、きっと新宮さんはその好きな相手と結ばれるよ。
俺が好きになった人はみんな好きな人と恋人になったから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます