第23話 海藤と朝美と新宮

「本当に海藤は不憫な奴だよ。好きになる人みんな、他の人と結ばれる。しかも前世の記憶はないもんだから、普通に一族の呪いだと思っている。確かに一族も呪いにかかっているが、比べ物にならない」

朝美の言葉に、新宮薫子は静かに怒りだした。

「まだだ、わたしが受けた傷はそんなもんじゃない。どんなに時が経ったって、私の心は落ち着かない」

あまりの剣幕に朝美は話題をかえることにした。

「で、女神さん。俺に何の用?」

新宮はこほんと小さく咳払いをする。

「最近、お前とあの男で変な部活をやってると聞いた」

朝美はにっこり笑いながらピースを作る。

「あー!!当て馬部のこと?結構評判いいんだぜ」

新宮はふいと横を向くと、機嫌悪そうにしている。

「善は急げだ!今から行こう!」

朝美は半ば強引に新宮を立たせると、腕を組み、

ずるずると引きづりはじめた。

途中まで抵抗していた新宮だったが、別棟の入口に来る頃には自分で歩き始めていた。


海藤は生徒会の仕事を終え、当て馬部の部室で書類を整理していた。

朝美はいないから、いままでの依頼内容をファイリングしていく。

廊下をドタバタ走る音がする。おそらく朝美だろう。

机の上のファイルから目を離さずいるといつも以上のハイテンションで朝美は、入ってきた。

「やぁやぁ!りょーちゃん」

あまりの煩さに顔をあげると、

朝美の後ろに新宮がいた。

海藤は想定していない事態にドタバタする。

ファイルをしようとしいた書類を落とすほどに。

冷静に書類を拾い、海藤は声をかける。

「新宮さんどうかしたんですか?」

声はうわづっていた。

「見学に来たんだよ!しばらく、新宮さんは当て馬部の活動を見守りたいって」

新宮ではなく、朝美が答える。

海藤は朝美の言葉に思わず、背筋をピンと 伸ばした。

「どうぞどうぞ!好きなときに見に来てください」

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