第22話 囚われの姫
朝美は前世の記憶を回顧しながら、別棟にむかっていた。別棟に入るときに視線を感じたので横目で確認すると、遠目に中谷が見えたが、彼はうわさを自ら流すタイプじゃないので、気にせずに中に入っていった。
別棟の見た目は古びた洋館のようだが、
中は完璧なセキュリティに守られている。
指紋認証でしか入れない。しかも、指紋が登録されているのは、理事長と、新宮薫子本人、そして朝美だけという完璧に完璧を重ねたセキュリティだ。
中に入ると、黒髪を腰のあたりまで伸ばし、セーラー服をきちんとまとった薫子が白いふかふかのソファーに座っていた。
「何かあったのか?」
朝美は、薫子に声をかける。
「まさか、あなたが生徒会室にいなくて、あの男がいるとは思わなかったわ」
薫子は凛とした綺麗な声でいった。綺麗な声だが、あの男という言葉には明らかに悪意がこもっていた。
「あー、だって。彼あれでも、生徒会長ですからね」
その言葉に少し薫子はブスッとする。
ブスッとしたところで顔立ちが整っているので、
誰もがどきっとさせられてしまう。
「それにしても、レイその話し方変!」
急に薫子は話題を変える。
あまりの急さに朝美はニヤッとするが
「だってよー!俺いまは、こんな超絶美少女だぜ、まぁ、女神さんには叶わないけどよ」
コミカルな動きをしながら、前世の時の話口調で話す。
「それにしても、まさか女神さんまで人間に転生すると思わんかったわ」
薫子はきっと朝美を睨む。
「人間界におりたり、特定の人間に強い呪いをかけることは、神の世界で大きなタブーになる。
あの男のせいで、私まで人間にされてしまった。
それでもあの男とここで出会えたのはある意味嬉しいことだ。それで、あの男にはお前や私のような前世の記憶はないのだな?」
朝美はこくりと頷く。
「そう、海藤僚には前世の記憶はない。だけど、呪いはきちんと残っている。近くでずっと見守ってきた俺がいうんだから間違いない」
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