第21話 前世の記憶Ⅲ
レイは内心焦っていた。
日に日に弱っていく友人リョウと、怒り狂っているカオの間に挟まれて。
ただひとつわかっていたのは、お互いがすごくお互いを好きでいるということ。
どこかで小さくボタンをかけ違ってしまっていた。
ただもったいないと思う。せっかくこんなに大切な人に巡りあえて、きちんとボタンとボタンホールは揃っているのだから、
一度きちんと話し合えばすっかり元通りになるはずだった。
板挟みにあいながら、お互いにそれを伝えるが、
一向に関係性はよくはならない。
こんなにもどかしいことはない。
自分が当事者ならば簡単に直せるのに。
そうこうするうちに1年の月日は流れ、悲劇は起こった。
カオの周りにいる村人たちがカオの知識とカオから与えられる恩恵を自分の物にしようと、リョウの悪い噂をカオの耳にいれるようになったのだ。
仕事をサボって一人で遊び回っているというところから派生した悪口は、気づけばエスカレートして、
他に女がいるというものに変わっていった。
カオは元々純粋無垢な存在なので、毎日毎日そんな嫌な話を聞かされて少しずつ変化していった。
最初のうちはレイに相談したり強くあたったりしていたが、そのうちに心を閉ざした。
そんな時にリョウは村に帰ってきた。
後ろには子供をつれた女性がいる。
それをみた瞬間に、カオは心がぽきりと折れてしまった。
カオは強くリョウに聞く。
「今までどこにいたんだ?」
リョウは静かに答える。
「彼女たちといた。この二人をどうかこの村にいれてあげてくれ」
カオは激昂した。
「お前は私を裏切ったのか?私がお前と子供と作れないと知ってて、子供を作ったのか?」
カオの言葉にリョウは何も言わなかった。
カオは怒り狂う。
「お前とお前の血を継ぐものに呪いをかける。一番愛している者に愛されない呪いだ。私はお前を許せない。お前が生まれ変わっても呪う。お前の周りの者にも影響はあるだろう」
純粋無垢だったカオはそこにはいなかった。
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