第20話 前世の記憶Ⅱ
カオとリョウの二人で住む家で
リョウはレイの言う通り自分の気持ちをカオに伝えることを決意していた。
カオはリョウに尋ねる。
「最近、村人の集まりにリョウは来ないが、何か忙しいのか?」
カオには嫉妬という感情がないようで、ただただ純粋無垢だ。
「まぁ、少し用があって。カオに聞いてもらいたいことがあるんだ」
カオは少し明るい表情を見せる。
「この村の問題点についてか?」
リョウは力なく首を横にふった。
「いや、僕と君のことだ」
絞り出すように伝えたが、カオは
「そんなことより、この村を豊かにするために」
言葉を続けるカオに、リョウはただ愛想笑いをしながら、生返事をしていた。
そして、心を閉ざした。
村の集まりにリョウはまったく顔を出さなくなった。
何ならカオと一緒にいることも次第に減っていく。
カオは怒っていた。リョウのために、女神をやめた。
リョウと暮らすのに、いい環境を作りたくて、村の相談にのっている。働けば働くほど、信奉者は増えていくが、リョウとの時間は減っていく。
怒りの矛先はリョウの友人にいく。
「レイ、リョウはどこにいるんだ」
レイは飄々と答える。
「そんなに怒んなよ、女神さん。しばらく村の仕事とか休んでレイと二人でゆっくりしたらどうだ?」
矛先をむけても、この男は飄々としすぎていて、
思った答えが帰ってこない。
「そんなことをしたら村が荒れてしまう」
カオは真面目なトーンで言った。
「まぁ、少しくらいなら放っておいても大丈夫だろ、村は。女神さん、一度一番大切なもんを考えた方がいい」
カオにとって、レイはリョウとは違った意味で特別だった。
リョウのことは大事で大切でリョウのためなら何でもできる。女神を捨てて、人間界に降りてきても、
人間と神であるため、子供が作れなくても、
それでもリョウとは一緒にいたいと思う。
村の人間は未だに自分を神として扱い、崇め、たまに、利用しようとしている。
レイだけは自分を女神と呼ぶが、説教してきたりからかってきたり、普通に扱ってくれる。
だから居心地がいいのかもしれない。
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