第19話 前世の記憶

朝美怜奈が物心ついた時には前世の記憶があった。生まれ変わる前、朝美は、一人の青年だった。

青年の名はレイと言った。レイには大切な存在が二つあった。

友人のリョウとその妻カオである。

その二人は異色の存在であった。

清廉潔白なリョウは自分と違ってどこまでも美しく、優しく正しい。

その妻カオはリョウのそんな姿に一目惚れした正しき女神であった。

カオにとって、リョウは特別な存在で、カオは神の国を捨て、リョウの住む村に降りてきた。

そして、リョウもまたカオに心惹かれている。


彼らのいた村は女神であるカオを迎え発展し始めた。

カオには村人ではわからないようなことを解決する能力があった。

カオはリョウのためにどんどん村を快適にしようと

村人たちの相談に乗り続けていた。

最初はカオとリョウの二人っきりの時間があったが、村が発展するにあたって、カオの周りにはいつなんどきも村人が囲うようになった。

リョウも一緒に村の発展のために懸命に働いたが、

日に日にその場に顔を出さなくなった。


レイは村人たちから離れて一人座るリョウが気になって声をかける。

「どうしたんだ?」

リョウは小さな声で言う。

「笑わないでくれるか?彼女は俺の誠実で清いところが好きだと言っていたが、俺はもう清くはないんだ。ずっと怯えている。彼女が俺以外の清く正しい村人に惹かれないかと」

あまりにも消え入りそうな声でいうので、いつもは冗談めかしていたが、真面目なトーンで伝えた。

「大丈夫だ。お前以上に誠実な男はいないよ。きちんと女神に話してみろ」

力なくリョウが首を横にふる。

「こんな思いを彼女に伝えて彼女に嫌われてしまうのがこわい。」

「それでもどこかでその思いを伝えなければ、お前が壊れてしまう」

レイの優しい説得に一度リョウは首を縦にふった。

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