第16話 中谷浩
お礼を言った海藤は中谷の斜め、朝美の隣に座った。
「まさか、中谷くんのような有名な男子が来るとは思わなかったよ」
有名?中谷は少し首をかしげる。
「君が優秀なのは知ってるよ!今度の大会の優勝候補だって聞いたよ」
朝美とは違って毒気のない瞳で海藤は賛辞してきて、少し気まずい。
「で、そんな中谷くんは、どんな相談事があるんだい?」
「特に」
そっけなく返す。何故か海藤のことは気にくわない。何が原因かは全くわからないが、リアリティーがない。
そっけなさに対して見るからにしょぼんとする海藤ときっと睨み付けている朝美は対照的だ。
「今日は当て馬部のクラブ活動内容について聞きに来ただけなので」
朝美は飽きたのか席を立っていた。
「りょーちゃん、私、用があるから先帰るねー」
同じタイミングで席を立とうとした中谷を海藤は止める。
「説明するよ。クラブ活動内容」
「当て馬部は、みんなの幸せを叶えるクラブだよ」
胡散臭い。朝美の説明もなかなか胡散臭かったが、
海藤が言うと危険な空気が伴う。
「とは言いながら、女の子の相談にのったりおしゃべりするようなクラブ活動だよ」
「何で女子だけなんですか?」
「中谷くんが信じてくれるかはわかんないけど、僕には生まれながらに一番愛する人に選ばれないという呪いがかけられている。誰かを好きになるとその相手は本当に好きな相手を見つけてしまう」
朝美と同じ話を海藤もし始めた。
賢いと思っていた生徒会長は少し変なのかもしれない。
「だからね、女の子の恋愛相談の方が成就させてあげられやすいんだよ」
そんなバカみたいな話あるだろうか。
「それが本当だとして、朝美さんとはどういう関係なんですか?」
間違いなく朝美は、海藤のことを好きだ。あの危険な牽制をしてきたのも好意からにちがいない。
「朝美は、幼馴染みで、呪いの見届け人で、僕に相手がいなかった場合の結婚相手だよ。だけど、家族みたいなもんだよ。とても頼れる相棒ってかんじだね」
呪い云々より、海藤という男は壮絶鈍感なんじゃないだろうか。
あんなに美人で自分のこと思ってくれると思ったら自分ならすぐ彼女を選んでしまうのに。
一つわかったのは、噂は全くのでたらめだ。この男が女性と密室だったとして、手を出す確率は低すぎる。
とりあえず運動部と友達づたいに、このクラブの安全性を伝えよう。
少し気にくわなかったはずなのに、気がついてみたら、お節介をやいてやりたくなるくらい海藤を気に入ってしまった。
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