第10話 田村小夏

果たし状のような招待状をひらひらさせながら、

指定の教室に向かう。

空き教室の扉には果たし状と同じ達筆な文字で当て馬部とかいてあるA4の紙が貼られていた。

扉を静かにあけると、

教室の真ん中の机に海藤は座っていた。

生徒会長として集会で話をしているときと同様、

綺麗な顔をしている。

目線がこちらを向くと、妙にドキドキしてしまう。

入り口のあたりでまごまごしていると

後ろから朝美が、現れた。

朝美は、神出鬼没である。

「さぁさぁ、田村さん、奥へずずいと」

朝美に、肩をかかえられながら、海藤の座る席の真向かいまでつれていかれてしまった。

みんなに人気のあるかっこいい生徒会長を前に緊張しない人間はいないだろう。

こうなってくると、清美はどうしてたんだろう?と思う。清美は小夏よりも恥ずかしがりだったはずだ。

「朝美、無理強いはよくない」

海藤は朝美に静かにつっこんだ。

「えー!!りょーちゃん。なにそれ!!かっこつけてるの?」

残念ながら浅美の方が一枚上手のようだ。

「朝美。ちょっとこっちこい」

海藤は朝美を、呼ぶと静かに退出された。

場は落ち着いたが海藤と二人きりの状況に緊張する。

海藤は状況に気づいたのか、机と椅子を1セットをもってきて、最初にあった机の集合体から、

少し離れた位置においた。

「このくらいの位置ならどうかな?」

優しく語りかけてくる。

「ありがとうございます」

小夏は素直にお礼を言った。

席に座ると海藤は聞いてきた。

「田村小夏さんだよね?単刀直入にきくけれど

恋愛のことで何か心配なことはある?」

小夏は

「聞きたいことがあります。清美ちゃんは、何を相談したんですか?」

どうしても気になっていた、清美の相談について聞いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る