第8話 二人目
佐々木清美を見送った教室で海藤はぼんやりとしていた。そこにいきなりドアップの顔が現れる。
「りょーちゃん!どうだった?」
変なテンションの朝美である。
「もしかして、佐々木さんに恋しちゃった?」
楽しそうに歌うようにからかってくる。
海藤は不機嫌になる。
「うるさい」
それに負けずに笑う朝美。
「やっぱりー?あのタイプ好きそうだなーって思ってたんだよねー。デートにでも誘った?」
海藤は首をかきながら
「だからうるさいって言ってるだろ?」
「おーこわ。りょーちゃんがあんまりピリピリしてるから、みんなに振られちゃうんじゃないの?」
「お前」
幼馴染みには、告白する前に玉砕したことがばれてしまった。腹立たしいのは、いつもいつも振られたときにからかってくることだ。ただ、それのおかげで、随分気持ちの整理をつけられていることは間違いなかった。ただし、本人には絶対伝える気はないが。
「さてと二人目のお客さん選ぶにあたり、お客さんからの指名制にしようかなと思うのだけど」
一通り人の失恋をいじっていたのに、急に真面目なテンションに朝美は戻った。
幼馴染みのこういうところは、逆にありがたいと思っている。
「なぜ?」
「いやぁ、今回の佐々木さんの周辺調査してたら、佐々木さん結構色んな人からやっかみにあったり、嫌み言われたりしてて」
「え!!」
「私もびっくりしたよ!思ってた以上にりょーちゃんの人気高くて、りょーちゃんとお近づきになりたくてもなれない生徒が彼女に嫌がらせを」
「それでどうしたの?」
朝美はにやりと笑う。
「それはもちろん平和的に解決したよ」
明らかに目は笑っていない。
これ以上聞いたところで、きちんとした説明は得られないだろう。
わかっているのは、今現在佐々木清美に、危害は及ぼす人間がいないということと、
相手の生徒が恐らく、朝美の存在に怯えていることだけだ。
翌日、恋愛クラブからのお達しが掲示板にはられた。
初回の応募者は応募者多数のため、抽選としたが、二回目からは当選者の紹介制とする。
尚、無理矢理に紹介させたことがわかった場合は、
取り消し及び粛清する。
ふざけたクラブからのお達しはどこの部活よりも学校からの配布物よりも重々しい雰囲気であった。
なのに、佐々木清美のまわりには生徒でごった返している。
でも、清美は次に紹介する人を最初から決めていた。
一緒に応募した友人の田村小夏である。
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