第5話 当て馬部

女子生徒に恋愛クラブの名前が知れるのに、時間はいらなかった。

高校生が大好きな恋愛を扱ったクラブである上に、

お近づきになりたいナンバーワン男子の生徒会長と話題性のある幼馴染みがやっているのだ。

生徒達の間ですぐに話題となった。

「それでどうするんだよ?」

青年は幼馴染みに問いかける。

少女はてへっという音が聞こえそうな腹の立つ表情をしている。

「いや、だからどうするんだよ?こんなに依頼がきて」

「私もまさかこんなにすぐに話が流れてくとは思わなかったし、抽選でもするか」

相談のためにおいた用紙は数十枚あったはずなのに、一枚もなくなっており、応募箱は満タンになっていた。

変な鼻唄を歌いながら、少女はその応募箱の中身を段ボールに出して、その中の一枚を引いた。

ジャジャーンとバカみたいに、口に出しながら、

紙を開く。

「初回のお客様はこの子だ!」



高校の空き教室に、最近できたばかりの恋愛クラブは存在する。

半信半疑で仲良しの友達が応募するというので、

特に恋愛なんかに興味がないのに一緒に応募した。

話題作りのつもりだった。

まさか自分が選ばれるなんてと

佐々木清美はうなだれている。

しかも、一緒に応募した友達は何度も何度もいいなぁと伝えてきた。

こちらもあまりに羨ましがられるので、無理を承知で、部員のひとりである朝美怜奈に、友達と交換してもらえないか聞いてみたが、

綺麗な大きな目を見開いて首を横にふっていた。

「私たちのクラブ活動でね、君が選ばれたんだよ?

それを別の人間にしてしまったら、それは不正になってしまうから無理だよ」


口調は優しいが聞き入れてくれない雰囲気を醸し出していた。

よく考えてみたら、朝美は一度決めたことは消して曲げないタイプだった。

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