第3話 幼馴染みは許嫁

青年の横にセーラー服の小柄な女子生徒が走り込んでくる。

ショートカットなのに、華がある。

快活そうな少女である。

「りょーちゃんは、今日もモテモテだね」

ニカッと笑うと八重歯が可愛い。

青年に対してここまで近い存在は彼女しかいない。

彼女の名前は朝美怜奈と言った。


彼女の存在は特殊で、

青年が生まれたときからの付き合いである。


呪いの見届け人という立場だ。

この呪いの見届け人は、青年の一族の一人に一人ずつつく。

呪いを受けた一族が、誰とも結婚できなかったときにこの見届け人と結婚することが決まっている。


つまり彼女は呪いの見届け人であり、青年の遠い意味での許嫁という存在だ。

何を隠そう青年の母は父の見届け人であった。


間違いなく子どものころから、ずっと一緒にいるので、とても居心地はいいし、

どんな悩みでも打ち明けられる存在だ。


ただし、距離が近すぎて、信頼はしているが、

異性という感覚が薄い。

特にこの少女は、猫のような目でいつも青年をからかった風に見てくる。


「そのふざけた口調はなんなんだ?怜奈」

少女は頬を、膨らませている。

「何かりょーちゃんがツレないー」

「今日はそういうキャラなのか?おバカキャラ?」

むぅと一言鳴くと、少女は口調を整えた。

「つまらん。お前のノリの悪さは腹が立つ。可愛い妹風幼馴染みを演じてやったというのに」

本来の少女の口調は男らしい。何なら少しおっさん臭い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る