第31話 学校のひよりin噂。下ネタ注意です。
時は少し過ぎ、1限終わりの休み時間。
ひよりは大好物のおにぎりを死守し、無事に3つを完食。
お腹も膨らみ幸福感に包まれてながら教室で2時限目の授業準備をしていた時だった。
「ひよりーん!」
「ひよりー、来たよー」
別クラスからの二人の友達が教室に入ってくる。片手を上げて笑顔で出迎えるひよりである。
「おっ! おはよ〜さんさん」
「たいよーさん!」
「また出たよ……。その挨拶恥ずかしくないの?」
「「全然!」」
この学校でツートップと呼ばれるひより。休み時間には別クラスの友達がこの教室に訪れることも多く、こうした
「それで今日はどうしたの? もしかして教科書忘れちゃった?」
「違う違う! 今日はひよりんに文句とか言いにきたわけですよー」
「も、文句!? ひよりに!? なんでっ!」
驚き、自身を指をさし、前のめりになるひより。
親しい友達から何の前触れもなくこう言われたら動揺するだろう。実際に心当たりなどないのだから。
「いやー今、ウチのクラスのLAINがすごいことになってるからね? まあ他のクラスもそうなってるとは思うけど。だからいろいろと聞きたいわけですよ」
「あんな目撃情報が出たらねぇ……。やることやってんじゃんひよりは」
「……ん?」
話について行けていないひよりは小首を傾げて細い眉を上げている。
「じゃあ時間も迫ってるし嘘なしで答えてね、ひよりん!」
「あ、はい!」
「まず一つ目! モデルの彼氏はどこで捕まえたの!? あとその彼氏の友達、ウチに紹介してくれない!?」
「いや、いきなりガッつき過ぎでしょあんた……」
「えっと……いきなりで驚いてるけどひよりに彼氏さんはいないよ? えへへ、ちょっとほしいなぁって思ってるけどね」
「最初からひよりん嘘ついた! もう彼氏作ってるのに!」
「さすがに誤魔化せないってひより。イチャイチャしてたトコみんなに見られてるし、ぶっちゃけひよりにカレシがいてもそこまで驚くことじゃないしさ」
否定するも畳み掛けられる。一対二の構図でよくあること。
「ひより本当に彼氏さんいないよ? だから見間違いだと思う。イチャイチャもしてないもん」
その代わりに確かな弁明、事実を述べるひよりだが状況が悪すぎる。抱きついていたとの目撃情報は強すぎるのだ。
ひよりのとって彼氏の誤解を解く道は一つ。バイクの運転手である蒼太に抱きついていた理由をしっかりと伝えることだろう。
「だ、だだだ抱きついてたのにイチャイチャなんてしてないとかもうやばくないっ!? えっ、普段はそれ以上のことしてるってこと!? なにその爆弾発言!」
「もしかしなくてもひよりって体はオトナになってるやーつ?」
「絶対なってるって! だって今日スラックス着てるし……制服ヤっちゃりまんがなでスカートが汚れたから変えたんだよ!」
「……やっちゃりまん?」
スラックスに変えた理由はバイクに乗車する際の危険を少しでも減らすため。
その説明が頭に浮かんだが、『ヤっちゃりまんがな』との不明発言に意識を取られてしまう。
「ひよりんはさ! 夜のテトリス体験して学校きたってこと!? 答えて!」
「……夜のテトリスってなに? ひよりテトリスしか知らないよ」
「こ、これ伝わらないの!? じゃあウインナーVSアワビの夜戦!」
「なんで二つが夜戦するの? ウインナーは加工されてるからもう死んじゃってるし……二つが戦うなら先にひよりが全部食べる」
「そ、そう言う意味じゃなくて……じゃあこれは? ベッドが軋む上下運動!」
順々に難易度を下げてくれているが、オトナの内容であることにひよりは気づいていない。
「あはは、そんなベッドでそんなことはしないよぉ」
「いい加減に伝わってくれぇぇい! 普通わかるよねこれ!? いや、ウチの心が汚れてるだけ!?」
「いや、ほとんど分かるでしょ。アタシも分かったし……。あのさ、ひより。もしかしてそんなコトに知識なかったりする? 一人でシたこととかないの?」
「さっきからひより分からないことだらけだよ……。一人で何をするの?」
話せば話すだけ教室は静まっていく。もっと詳しく言うならひより達の会話に聞き耳を立てるために喋り声は減っている。
思春期ということもあり、こうした話題に興味を持つ学生が多いのだ。
「じゃあ、ひよりん! 赤ちゃんってどうやって作るのか知ってる!?」
「む、ひよりをバカにしてる?」
そんな基本的な質問に小さな顔をモヤっとしかめるひより。知らないはずないよ! との顔である。
「あー、ごめんごめん! やっぱりそれは分かるんだね!? ならさっき言ったのは全部それと
「ママとパパが仲良くしてたら赤ちゃんはできるの」
「……」
「……」
この瞬間、何かを悟った二人である。
「えっと、ひより? どのように仲良くしてたら赤ちゃんができると思ってる?」
「ど、どうやってって……二人のお家を買って幸せに仲良く過ごすでしょ? あとはカレンダーに丸をつけた日にできるの」
確かにそれまでの工程は間違ってはいないのかもしれない。
「ひよりん、それどこ情報? ネット?」
「ママから教えてもらったよ!」
「めっちゃ言いにくいんだけど、それはウソだよ?」
「嘘じゃないよっ! ママが言ってたもん」
両親は子どもに嘘をつかない。正しいことを教えてくれる。確かにその通りである。
しかし、『赤ちゃんはどうやってできるの?』との純粋な質問に対しては例外になる。
「……うん。これで一つは分かった。ひよりんは卒業してません!」
「こんな純粋な相手に手は出せないだろうしねぇ……。なんかカレシが生殺しされてる気がするけど」
「ね、ひより本当に彼氏さんいないよ? 誰と勘違いしてるの?」
「ひよりんまだ誤魔化すの? 今日バイクで彼氏と一緒に登校してたでしょ!?」
「そ、そうだけど……なんで知ってるの!?」
噂の中心人物だからこそ知らないのだ。今起こっている騒動に。
「LAINでめっちゃ拡散されてるから。カレシの噂は女子校の大好物ってことで。そんなわけでバイクの運転手がひよりのカレシって言われてるわけ。抱きついて登校してたらしいし」
「ち、
やっとのことで解決が見えたひよりは両手をフリフリして必死に言葉をつなげる。
この噂は蒼太に迷惑がかかる……と、頭に浮かんでいたのだ。
「じゃあひよりんの彼氏じゃないってこと!?」
「そうだよっ! ひよりが住んでる寮の管理人さん!」
「で、でもね? 『ひよりの彼氏さんー』って言って手を振った人がいて、ちゃんと振り返してくれたらしいよ?」
「え……」
おにぎりを受け取った後、ひよりは時間に余裕を持たせるために走って教室に向かっていたのだ。つまり、その時の現場を見てはいなかった。
しかし、これの真実は数人に手を振り返した結果、その声が偶然にも混じっていただけ……。
「もしかしたらその管理人さんひよりんのこと狙ってるんじゃなーい!?」
「狙ってるっていうか、ひよりのこと好きってことでしょ! それ以外に手を振り返す理由ないよね?」
「っ!?」
思いもしない流れにびくっと肩を揺らすひよりは透き通った瞳孔を揺らしている。
「ひよりんからしてどうなの!? その管理人さんは!」
「アリ、ナシ?」
「え、えっと……ナシ……ではないよ……。ご、ご飯も美味しいし……。でも、アリとかは分からない……」
ひよりは素直なのだ。少し俯きながらも隠すことなく想いを伝えてくる。
「えっ!? ナシって選択肢はないってこと!? じゃあもう付き合っちゃう!? これは付き合っちゃう!?」
「ちょ、ひより顔めっちゃ真っ赤じゃん」
「っっ!! み、見ないで……っ!」
「はははっ、ひよりん照れすぎ! あ、顔まで手で覆っちゃって!」
「耳もすっごい赤くなってるし……。あ、首元も……」
「もーっ! からかわないでっ!」
『ひよりのことを狙ってる!』『ひよりのこと好きってことでしょ!』
なんて言われるのはひよりにとって初めての体験。
少しばかり想いを伝えられたようなこの状況に頭が真っ白になり、羞恥が襲いかかってくる。
今日一日、その話題でいじられることが確定したひより。先生にもいじられてしまうひよりである……。
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