第9話 その魔王遅刻につき
暗い常闇の大きな部屋に1つの灯りが灯される。
「皆様……お待たせ致しました……」
暗闇の中でろうそくを持つ1体の異形の怪物。この怪物が暗闇の中にろうそくを投げると、地面からその炎が竜のように伝わり、たちまち壁に掛かってあるろうそく数本に火がついた。
火がつくと大きな円型のテーブルを前に12の怪物が椅子に腰掛けていた。
バンッ!
その中の一体の、鬼のような体つきをした赤い肌を持ち牙をむき出している怪物がテーブルを大きく叩いた。
「遅いぞッ!ゼハスチャン殿ッ!それに魔王様が居ないでは無いかッ!1体何をされているのだッ!」
「申し訳ございません……何せ魔王様は人間界を偵察中ですので……」
「何だとッ!?こんな大事な会議の時に人間界に赴くなど今回の魔王様はどうなされているのだッ!」
十二魔族魔界会議 通称 【ママ会】
数ヵ月に1回、魔界を納める魔族の長達が魔王城に集まり人間にどう対抗するか、攻めいる際の作戦はどうか等を考える場所で過去の様々な功績がこの会議に関わっている程。
「うるさいのう。口をつつしめ脳筋のオーガ族よ。少し黙るがえぇ」
大きな扇を広げ口元を隠している目が真っ赤で黒く小さな翼が生えた色白の女が呟く。
「何だとこの吸血女ッ!我らオーガ族を侮辱する気かッ!」
勢い良く腰掛けていた椅子から立ち上がる。
「侮辱する気では無い。侮辱したのじゃ。」
「そうか。なら今ここでお前らの血筋を立ちきってくれる。」
大きな腕を少し前に出し手を広げる。
「やれるものならやってみろ負け犬。」
女も立ち上がり口元を隠していた扇を前に出す。
「やめんか2人供」
腕を組んでいた1人の青い肌をした爽やかな顔をした男が口を開く。
「あぁ?テメェからぶっ殺……チッ」
そう言い少し睨みながら再び椅子に腰掛ける。
「折角、いまいましぃオーガ族を無きものに出来るチャンスだったのだがのう……」
そう少し皮肉を言いながらも女も椅子に座る。
「それで、セバスチャン殿。魔王様は後どれくらいで魔界に?」
男は顔を上げゼハスチャンに問う。
「いま、メイドに連絡をさせております……10分以内には駆け付けるかと……」
それぞれ魔族達は緊急用にどれだけ離れていても言葉を届けられる魔法の道具が頭の中に備え付けられている。
その道具を使う時は頭に人差し指を当て、言葉を送りたい人の名前を叫ぶ。
そうすると電話の用に繋がる仕組みだ。
――調理場
魔王様……全然出ないな……これで何回目だろう……
「魔王様~!!」
プルルルル、プルルルル。プーップーップーッ
あーもう!何してるの魔王様は!!仕方がない……こうなったら……
「あぁん!///魔王様ッ!!///」
プッーカチャ
「どうしたんだ」
「エロい声で直ぐ出るのやめて下さい魔王様。」
「それより何か用……?」
「何処にいるんですか?直ぐ帰ってきて下さい。魔界の会議が既にもう始まってます。まだ、挨拶もしてないですし早く行った方が良いですよ。」
そう言うと魔王の声が突如真剣な声に変わった。
「今は駄目何だ……すまない……」
「そんな真剣に……どうしました…!?」
「うわっ!!」
魔王の叫びが脳に響く。
メイドは慌てた様子で聞く。
何!?今、魔王様に何が起きてるの…!?
「えっ!?何してるんですか!?」
「くそッ!何してんだ!だから始めから言ったじゃないか!めんこでスカートはめくれ無いって!!」
「えっ……何してるんですか……」
「いや、違うコレはっ!!」
魔王は小声になる。
「……ちょっとトイレ行くから待ってて……」
その声が途切れるとメイドの後ろの空間が引き裂いたように開く。
「とうっ!!魔王到着ッ!!」
そこには普段のあのイケメンの姿の魔王がいた。
メイドは目の色が消えており魔王をジーッと見ている。
「えっ!?何ッ!!ごめんっ!俺が悪かったから許して……!!」
「……はぁ……分かりましたよ……」
メイドをそう言い肩を下ろす。
「ありがとう……でもその頼むからゴミを見る目で見ないでくれる……?」
「とりあえず、案内するんで私に付いてきて下さい魔王」
メイドはそう言い歩き出す。
「えっ……ちょ……何か荒くない?……」
魔王は慌てたながらも
そのメイドに着いていく。
本来ママ会は時間厳守で始まる30分前には席に着いてなければならないのだ。
所がこの魔王は会議の時間を10分も遅刻してきており、それ相応の弁明をしなければならない状態だった。
「魔王。この先ですよ。」
常闇の廊下をひたすら進むと大きな15m近くはある巨大な扉が見えて来た。
何か冷たいな……
それに呼び捨て……
「わかった。ありがとう。でも部下とはいえ何だか緊張するな……」
魔王は進み扉の前に来た。
グッーと力いっぱい扉を押す。
「んんっ!!ん!!」
あれ……?開かない……
「はいっ!!ほわぁっぁあ!!」
何で……?あれ……?
「とりゃぁぁあ!!」
肩をトントンとメイドが叩く。
「この扉。引き戸です。」
ガラガラガラ
あっ……簡単に空いた……
扉が開くと薄暗くろうそくが灯す大きな部屋に12の怪物達がテーブルを中心に椅子に腰掛けていた。
うわぁ……この空気……苦手……
「あっ!あの~?皆さん~?今回の会議は何の為に~?」
シーン……
「あっあの……すみません……」
頭を深く下げる。
き、気まづいっ!店長が居る時にバイトを遅れて行った時に見たいに気まずいッ!!
セバスチャンが魔王に声を掛ける。
「顔を上げて下さい魔王様……。何はともあれ、魔王様が来てくださったのです。早速議題に移りましょう。」
魔王が少し顔を上げ、涙目でセバスチャンを見る
セ、セバスチャン……ヤバイ、優しさで泣きそう……
「それで今回の議題ですが……」
セバスチャンは少し息を飲み間を空ける。
「とうとう人間界に勇者が出現したそうです。」
――ッッ!!
その場に居た魔族の長達は驚愕の表情をし、ざわめきはじめた。
勇者……まさか……本物の……?
俺があそこにワープした時には確かにまだ、魔方陣があったッッ!!
まさか……こんな早くに……ッ!
セバスチャンが言葉を発する。
「その名も……勇者
あっれっぇ?……
えっ……まさか……
本物が現れたと思ったけど……
俺の事でした……
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