第5話 その魔王冒険につき

「それでは族長様!!行って参ります!!」

観音開きの大きな城門の下には[祈り人]と国王、そしてヴァリューが見送りに来ていた。


魔王とルルはその城門の外側に居り、すでに歩き出していた。目の前には広大な草原が広がり、それはまさに冒険の始まりと言わんばかりであった。

そして、大きな声で城門の方へ手を振る彼女はどこか嬉しそうだった。


「行ってしまったのう…ルル…」

老人はどこか寂しげな顔をしていた。腰を曲げ、手で支えながら白いローブを着た数人の仲間と国の中へと戻っていく。


「我々も戻りましょう。」

ヴァリューが国王にそう呟く


「それしても良かったのう…勇者が生まれて…」


「まっ…まだまだ俺より弱いですがね…」

ヴァリューはその大きな身の丈ほどある大剣を肩に乗せ後ろを向き歩き出した。


「ほっほっほ…」

国王は歩いている勇者を笑顔で見、ヴァリューの方へと向いた。

「所でヴァリューよ」


「…はい?」

ヴァリューが立ち止まり国王の方へと上半身を少し向ける。


「ヴァリューのう◯こがヴァリュヴァリュヴァリュ」

国王はがに股になり頭の上に両手の指先を乗せ意味の分からないポーズを取った。


「国王様……」

しみじみするとキャラがブレる癖そろそろ直した方が良いですよ――


……


ヤバい……勇者として旅に出ちゃった。

どうしよう……どこのタイミングで魔界に帰ろう…。


草原を歩いていると小さな川が少し見えて来た。


「勇者様っ!ここで少し休憩しましょう!」


「あ、はい!休憩しましょう!」

やっぱ帰らなくていいかも、、、


魔王とルルは川のほとりに座り少し話をしていた。


「勇者様はどこから来たのですか?」

ルルは座り込む俺の顔を除き混むように聞いて来た。


あっ!こっちを見ないで!

可愛すぎるゥゥゥゥ…

谷間が見えて頭がおっぱいおっぱい

い、い、い、


「あぁぁぁあ!!」

魔王は天を見上げ奇声を上げ頭をかきむしっていた。

そして、スッと顔を下に向ける。


これはハニートラップだ

これはハニートラップだ

これはハニートラップだ


……良し!


この子を魔界に持ち帰ろう!


「ってちがぁぁぁう!」

立ち上がり石を川に勢い良く投げた。


「その…悩ませたようでしたらごめんなさいっ、いやなら言わなくてもいいんです。」

ルルは顔を下に向け手で耳元の髪をかきあげる。


ヤバい、めっちゃいい子……

もう俺このままこの子と永遠の冒険に出掛けようかな。

「る、ルルはさ」

魔王が少し顔を赤く染める。


「…?」

不思議にまたこちらの顔を除き混む。


恥ずかしさでたまらず顔を逆に向ける。

「な、何で昔から勇者と冒険しようなんて?」


ルルはフフッと少し笑うと大の字になり寝転んだ。

「私は、人の役に立ちたいんですよ。」


「人の役に…?」


「はいっ…[祈り人]としてではなく[ルル]として…」


「だから勇者と一緒に魔王を…?」


ルルは起き上がり俺にその笑顔を向けた。

「はいっ!魔王を殺してみんなの役に立ちたいんです!」


まさか俺っ…

自分を殺す為の仲間と旅する……

かなり難易度高めの自殺しようとしてる…?

どうしよ…あぁーどうしよ…


ダメだっ!どう考えても可愛いが勝つっ!

セバスチャンに何て言おう…


ま、まぁでも今は……


「と、とりあえずさルル」


「?」


「これだけは伝えて置きたいんだ…」

魔王は真剣な目でルルを見つめた。


「……何でしょう?」


魔王はスーッと息を飲み込む。

「魔王を殺すって言い方やめない……?」


そこから三日間、ルルと共に旅を続けた。

森林や崖、険しい道をくぐり抜け、さらに釣りや火起こし、寝床の確保など一通りの事は全て出来る用になっていた。。。


ルルが……


そして、朝から歩き続け程なくしてからわらで出来た小さい家の郡を発見した。

それは家とは呼ぶには少し大げさかもしれないがわらをくくり縛り上げそれを編む。その芸当は素晴らしい物だった。


「ようこそおいで下さいました…旅人様方」

わらの家の郡に近付くと杖をついた1人の老人がそう声を掛けて来た。


「これ村って呼んでいいの……」

俺からすれば村とは全く見えなかったからだ。規則性も無く、点々とわらの家が立っており柵や見張り台など一切無かったからだ。


「立派な村にございますよ……」


一緒に居た、ルルは両手を膝に置き少しかがみながら笑顔で老人に聞いた。

「この村の名前は何て言うんですか…?」


「この村の名は……」


老人は急に杖を離し腰を上げ手を上下に振りながら叫ぶ。

「www村っていう村にございますwwwギャァハッハッハッハッッ」


うわぁ……キャラ濃い、めんどくさそう…

っていうって何だ

それにぜっぜん面白く無


「うふふ…」

ルルは口元に手をかぶせる


あっあれぇ?

「る、ルル…?」

魔王は不思議そうな顔でルルの方へと向いた


「ご、ごめんなさい勇者様クスクスクス…面白くて…クスクスクス」

ルルは涙目になり、腹を抱えていた。


そのルルの姿を見て嬉しくなったのか老人は再び、手を天に、のばし

「www村ですwww」


「アッハハハハハwww」


「www村ぁぁぁwww」


「もうやめて下さいwww」


俺はその光景を見て…空いた口が…塞がらなかった。


出会った時からずっと思ってたけど…


これ多分あれだ…


ルルは…


極度の天然だ……



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