第4話 その魔王一目惚れにつき

こんにちは、魔王です。

私は今、とんでもない状況になっています。前回私は人間界を偵察しようとワープをして人間界へとやって来たのですが、ワープした先は勇者召喚の間でそれから勢いで色々あって私は今、勇者として人間の国の王と対面する事になったのです。


大きな扉が観音開きに開くとそこには真っ直ぐ延びる赤いカーペットが敷いており両脇には剣を構えた王国の騎士達が鎧を光らせながら整列し敬礼をしている。

カーペットの先には少し階段がありその上には玉座に座る片目に傷を負った白髪で長髪の老人と、その玉座の斜め後ろには大きな大剣を肩に構えた金髪でオールバック、立派な体つきをしたタンクトップの男が立っていた。


「さぁ…勇者よ…こちらへ…」

老人が玉座から立ち上がり手を広げた。


魔王は数歩歩くと後ろの扉が閉まった。辺りを見渡しながらカーペットを進み玉座に一定の距離を保ちつつ立ち止まった。


「ようこそお出でくださいました、勇者様」

老人はそう言い玉座に席をついた。

老人は手を胸にかざし少しお辞儀をしながら自分の名前を喋った。


「私の名は[デルカダル ダ アルケミス マライア]マライア王国第10代目当主でございます。そして…」

老人は手を斜め後ろの男に指した。

するとその金髪の男が数歩前に出て自己紹介を始める。


「俺は王国12騎士団団長のヴァリューと言います。」


そう言い早々に下がった。

魔王は緊張とバレたらどうしようと言う気持ちが重なりここまで全く喋らなかった。


「ところで勇者様…」


「アッ…ハイ!」

体がガッチガチに固まっていた。


「勇者様の名は…?」


名前…?

ヤベッどうしよ…そんなの知らないんだけど

ヤバい国王様こっちずっと見てるんだけど。

名前…よしっ俺の大好きなrpgのド◯クエから取ろうそうしよう、、、

勇者…名前…名前…


「我が名は大勇者ゾーマです!」

そう言い訳の分からないポーズを取った。

何か出来れば調子にのるいつもの癖だ。


マズいッッ!考えすぎた余り勇者と魔王が混合して大勇者ゾーマっていう意味わかんない名前の勇者になっちゃったッッ!

何だよ大勇者ゾーマって!てかもう魔王要素めちゃくちゃ混ざってるじゃないか!?


魔王は心の中でそう思いポーズを取ったまま固まっていた。

「ほっほっほ…今回の勇者様はお楽しそうな方ですな…」


ヤバい…何だコイツ…セバスチャンみたいな事言いやがる…


老人はまた立ち上がり両手を大きく広げ魔王に熱く語りかけた。

「…それでは勇者ソーマよ!魔王を倒すための資金[50G]と[どうのつるぎ]をそなたに託そう!今からそなたの旅路が始まるのだ!!」


50Gとどうのつるぎってもう丸々ド◯クエじゃねぇか、コイツ絶対知ってるだろ!?

しかもこのじーさん耳が悪いのか濁点着いてないし、どうせならゾーマって呼べよ!そっちの方が何かしっくりくるわ!


魔王は手を少し伸ばし

「いや、あの…ソーマじゃなくてゾーマ…」


「それでは明日の旅路に備えて今日はこの城で休んでいくといい!!勇者、蒼真そうまよ!!」


漢字めっちゃカッコいいけどもう元の原型ねぇじゃぁぁぁん!!


そして蒼真は半強制的に城の客室へと連れていかれ夜を過ごす事になった……


客室はこじんまりとしており扉を開くとベットが一床右端に、その真横にはランタンが置いてある小さめの机と椅子、流石は城の客室と言わんばかりに過ごしやすい快適な空間であった。


魔王は椅子に座り机に肘を付けて頭を抱えていた。

「ヤバい…どうしよう…セバスチャンにどう説明しよう…」


魔王はその時にピンっとランプが付くように閃いた。

「そうだ!この立場を利用すれば簡単に人間界を手に入れられるのでは!?」


魔王は椅子から勢い良く立ち上がりガッツポーズをした。

「アッハッハッハッ!!良くやった俺!!流石は俺!!」


トントン

誰かが木の扉をノックしてきた。

「勇者様…お食事をお持ちいたしました…」

清楚で可愛らしい女の声だ。


魔王はその声で独り言を多用していたさっきのまでの自分が恥ずかしくなり椅子にゆっくり腰掛け、冷静な声で答えた。

「入っていいぞ…」


「失礼します」


ガチャ

木の扉が開く。

魔王はそっとそちらに顔を向けるとその女は

召喚の際に居た[祈り人]の1人だった。

来ていたのは白いローブでは無く皮の貧相なドレス。

顔何て召喚の際は全く気にしていなかったが魔王はいざこうして見てみると……

金髪の長髪で胸は大きく白い肌…

そう…魔王の好みにドストライクであった。


一目見た瞬間に自分の心に勢い良く風が吹くような感覚に襲われた。胸がドキドキする。

そう…これが…


「一目惚れ…」


「どうか…しましたか…?」

食事の器を持ったその女は不思議そうにこちらを見つめる。


ヤバい、そんなくりくりっとした可愛らしい目で俺を見つめないでくれ///


こ、こ、こ、こんな時はどうすれば…

「スミマセンッ!チョッと用を足してきますのでッ!少し待っていてクダサイ!」

魔王はガッチガチになりながら椅子から立ち上がり歩き出した。


「あ、…はい…分かりました…」

女は不思議そうに顔を傾けこちらを見つめた。


トイレの扉を開き中に入ると手を目の前に伸ばし甲を合わせて開いた。

「ワープッッ!」


「とうっ!」

ワープしたそこは魔王城の調理場であの人間の姿に化けているメイドのいつも場所であった。

魔王はワープ中に変身を解いていた。


「あっ…魔王様…こんな所に何故」


魔王はメイドに詰め寄り両肩をガッシリ掴んだ。

「おいっ!」


「あっ////」


「好きな人が出来た場合、どうすればいいんだ」


メイドは顔が真っ赤になり

あれ…?魔王様っ?ダ、ダメですって//

身分も何も違いますし///

で、でも…魔王様がいいのなら///

「やっぱり、少し喋ってから本題にしませんか///わ、私…心の準備が///」


「少し喋り本題…良し分かった…ありがとうっ!」

そう言い魔王は再び出てきたワープに飛び込んだ。


そこにはメイドが1人残っていた

「ま、魔王様…えぇぇ…」



……


ガチャ

木の扉を開く。

「マッチマシタカ?」

そこには勇者としての魔王だった。


「いえいえ…待ってないですよ。」

女はずっと立って待っていた。

お互いに今は立ち止まって見つめあっている。


少しお話少しお話少しお話少しお話

「キミはタシカ、ショウカンノトキノ」


「ウフフ…覚えてくれていたんですね…」

そう言い女は食事の用意を近くの机に置き

手を胸にかざして

「私はルルって言います、勇者様」


「ルル、カァ…イイ名前ダネ…」


「フフッ…ありがとうございます」

ルルはにこやかに笑顔を向けた。


ヤバい…この笑顔…破壊力抜群だ。ポ◯モンでいう瀕死状態……

ヨシ少し喋ったから本題ダナ

何て言おう何て言おう何て言おう

ま、まずはお辞儀をして


魔王はルルに向かい頭を下げ手を伸ばした

恥ずかしいからなるべく一言で尚且つ分かりやすく……

「お、俺と一緒に魔王城に来てくださいっ!」


やーっ!!言っちゃたぁぁあ!

断られたらどうしよう死ぬよ俺、生きていけないっ!!


「その…私は…勇者様にこんな事が言われるのが…夢でしたっ…」

ルルは顔を少し赤く染めモジモジしている。


あらら?これはまさか…まさかの…?


ルルは魔王の手を取った。

「か、顔を上げて…勇者様っ…」


来たのでは!?来たのでは!?ついに俺にこの子との子供が…!?


魔王は顔を上げる。

「じ、じゃあ…!いいんですか…?」


そう言いルルは笑顔で魔王に答えた。


「ハイっ!一緒に魔王城に行き!魔王を殺しましょう!」


え……


違う……そうじゃない…


えぇ……



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