第3話 敗走(前)
薄暮
頼りない残照の朱色は落ちて行くかのように西の山の輪郭をはっきりと浮かび上がらせ、その向こうに消えていく。今はただ、濃紺になり始めた空に月が輝き、そのか弱い明かりを頼りに
やめておけば良かったのか……都で、都で出世できずとも穏やかに生きるべきだったか……
軍、これまたなんと頼りがいのありそうな大樹であることか!
さらに一度異国を見てみたいと、幼少時より持っていた異国への
次第に戦場の歓声の悲鳴も聞こえなくなってきた。他にも逃げている兵がいるが、
しめた!
名将と名高い
「何者か!」
警備の兵がこちらに気づいたようだ。味方であることを示すため、大きく手を振りながら近くにいた兵に声をかける。
「助けてくれ! 俺は
一部はウソだ。会ったことはないが
親子でまとめて戦死してくれていれば心を込めて
「おお、それは大変だったな。ケガはないのか?」
何も知らない警備の兵は心配そうに佐成に声をかけた。
その後、
だが、
「
「ここにおります! どなた様でしょうか?」
飛び起きて、姿勢を正した。高級そうな黒い鎧を身に付けた武人が、何人か部下を引き連れてやってくる。
「やはり
「
なお、
「伯父上が今回の遠征を率いると聞き、頼み込んで軍に加えてもらった。まあ、それはいいとして、お前、
実は
「
「ああ、聞いたことはある。大したどら息子らしいな……穏やかで知られるお前が逆らうなんて珍しいとも思うが」
そう言ってから、
「まあ、それは良いとしてお前をこのままただの兵にしておくのは惜しい。どうだ、逃げてきた兵をまとめて
そんなに
それ以外では、
「俺から伯父上に取り継ごう。しばらくここの軍で働けよ。お前ならいずれは
「ありがたいお話ですが……」
「鎧も何もないか。それは用意しよう。久々に旧友に会えたのだからな。とりあえず客将ということだ。この戦が終わったら飲もう」
「ありがとうございます。拾う神とはまさにこのこと……」
こんなところで拠るべき大樹に出会えるとは……!
その日、
とりあえず、寝よう
ん……なんだあれ?
ふと、地面に何か光るものを見つけた。
最初は折れた武器か何かかと思い、拾ってみたがよく分からない。
「
思わず
「ああ……素敵だ! これはなんなんだろう! この
思わず嘆息がダダ漏れになり、
興奮が落ち着いたところで、
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