懐かしい匂い

柚希藍璃

ゼロ話

「懐かしい」 「どこかで見た」……

人が誰しも持ったことがあるであろう感情。

絶対的な理論ではないが、少なくとも

多種多様である人間の感情の中でも、

最も必要とされる感情の1つであろう。

「あっこれ懐かしいな」

「どこかで見たことあるね」

そのような会話を耳にしたことがない人間は

今では少ないであろう。

人間が記憶を辿る際には、

「懐かしい」という感情を土台にして

失った記憶を取り戻すのではないか、

僕はそう思っている。

僕の中での1番古い記憶は、

今ではどれなのか全く思い出せない。

だが不確かなものなら辿ることができる、

僕の中で1番古いと思われる記憶、

それが偶然「匂い」だったのだ。

少し鼻に残る、不快な匂い。

恐らく親のどちらかが吸っていた

煙草の香りであろう。

僕にはその匂いが不快なものではなく、

「懐かしく、記憶を思い出させてくれる」

そんな香りだ。

懐かしい、どこかで嗅いだことがあるだけで

そこまで変わるものか、

もしかしたら人間が本当に

懐かしいと感じるものは、

その本人が大切に思っている

人間の匂いなのではないか。

これはただの戯言に過ぎないことだが、

少し思考を曲げてみよう。

皆は何を持ってして懐かしいという感情を

抱くようになったのだろう。

懐かしいという感情の矛先が親とも限らない

もしかしたら気の所為かもしれない。

友達の家で少し見ただけかもしれない。

…でもよく考えて、懐かしいものと言うのは

最も古い記憶や、大切だったものに使うのが

相応だと思わないか?

懐かしいという感情こそが、最も僕達を

知っている感情では無いのか、

懐かしいお菓子、懐かしい光景、

懐かしい匂い、懐かしい服。

他にもいろいろあるであろう、

だがそれが本当に、

何よりも懐かしいと感じて

その言葉を発するような人がいるのか。

人間はそこまで考え物事を発する

生き物ではないだろう。

職業が心理学者や研究員なら、

別なのかもしれないが

恐らく一般市民がこのように考え発する人は

少ないであろう。

論点がずれている、そんなもの戯言、

そういうことを思う人も少なくはないだろう

だがもしかしたら戯言だからこそ、

論点を気にせずに

思考だけを回しているからこそ、

何かに辿り着くことが

できるのではないかと僕は思う。

今回の議題は「懐かしいなにか」だったが

皆さんはなにか答えが出ましたか?

…少しの時間でいいんです、この文を読み

くだらないことでもいい、自分のために

思考回路を回してみて下さい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

懐かしい匂い 柚希藍璃 @hiyokomochiaiai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ