セカンドライフル
廃墟の高層ビルの上層窓から一人の少女が小銃を構えていた。
「目標はもうすぐ到着らしい」
奥の階段から一人の男性携帯を耳に当てながら出てくる。
「…了解」
少女は小銃のボルトハンドルを操作して弾薬を装填する。
「本当に見えてんのかそれ?」
男性は聞く、少女が構えているのはモシン・ナガンという名の小銃。ボルトアクション方式でかなり古い小銃である。スコープは付けておらずアイアンサイトのみで目標見ていた。だがその目標というのは数百キロ先にある高層ビルだった。
モシン・ナガンの有効射程距離はおおよそ一キロも満たない、それより先を見つめる少女。
「次こそは仕留める」
少女はそう言い目標を待った。
数分後、男性が双眼鏡で少女が狙う高層ビルを見ていると「来た」と言うと少女はトリガーに指をかけた。
男性が見ている高層ビルの中では複数人の人達がビルの中を歩いていた。
「目標は中央。いいご身分だな、あんなデカい腹だとスーツもパンパンだな」
高層ビルの中で歩く複数人の中に一際目立つ体型をしていた人物が歩いていた、それこそが目標だった。
「風速計算、射角計算全て予測範囲内。撃てる、合図」
少女は銃口をミクロ単位でズラしたのち止まり集中した。
「合図、3…2…1」
ゼロと言う前に乾いた銃声が鳴り響いた。
「おまっ、はや…」
男性は双眼鏡から目を離して少女に怒った。
「風向きが微弱変わった、目標は?」
少女は顔色一つも変えずにボルトを操作する。男性は双眼鏡を覗く、そこには本来目標が倒れているハズだったが倒れておらず一人の人物が庇うように立っていた。
「アイツは…、おい!アイツだ!」
少女はハッとして立ち上がり目標がいる高層ビルを見つめる。
「…ザイツェフ」
少女はそう呟くと双眼鏡で見ていた男性が驚く。
「頭下げろ!」
男性は急いでその場に伏せると目標を庇った人物は肩に担いでいた小銃を構えた。それは少女と同じモシン・ナガンだった。少女はしゃがむこともなく同じように構えた。
次の瞬間、銃弾が少女の頬を掠めた。掠めると同時に少女も撃ち返す。
素早くボルトを引き次の弾薬を装填する。最初は頬を掠め、次は肩に、次は腕に、と頭から段々と離れていくが少女は少し焦っていた。そんな少女を見て男性は止める。
「止めろ!今は逃げるべきだ」
「逃げない、奴は殺す」
一発撃つ、しかし外れたのかまた装填する。だが次の弾を撃とうとした時、トリガーに掛けていた指を撃たれその場に銃を落とす。
「ぐっ……うぅ……」
痛みを堪えるがその場に血が流れ落ちその場に小さな血溜まりが出来る。
「マズい!伏せろっ!!」
男性は少女に飛びかかるが肩を撃たれる。
「うっ…」
その場に倒れ込みなんとか射線から外れることが出来た。男性は撃たれた肩を力強く押えるが血は滲み出てくる。しかしそれより先に少女の撃たれた指を確認する。
「大丈夫か、指が二本逝ってるやがる」
「うっ…うぅ、痛い」
少女は苦痛の表情で撃たれた指の腕を押える、指はトリガーに掛けてない中指と薬指が無くなっていた。
男性はポケットからハンカチを取り少女の無くなった指にかけて押える。
「痛い痛い」
触るだけで痛みが走るのを押さえつけられて更に痛みが増して少女は泣き叫ぶ。
「我慢しろ、とりあえず逃げるぞ」
男性は少女をおんぶしてその場から逃げようとしたが下から大きな爆発音が聞こえた。
「おいおい、マジかよ。笑えねぇぞ…」
ゆっくりと軋む音が段々と大きくなりながら床が傾き始める。
男性と少女が今いる廃墟となった高層ビルが崩れ始めていた。
「ヤバい!死ぬ死ぬーー!!」
そのまま高層ビルが倒壊して巻き込まれた男性と少女。
その頃、目標の人物がいた高層ビルではモシン・ナガンを構えていた人物が銃を下ろす。
「もう大丈夫か?」
その場に伏せていた目標の人物とその他大勢の人達。
「…まだまだだなヘイへ」
そのまま立ち去るモシン・ナガンを持った人物。
「ファーストライフルはこの俺様だ」
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