第12話微4
自分の分の弁当は食べてしまったし、お菓子を食べさせるのもどうかと思った。
こいつが奪ってきたお菓子は今度あったらガキたちに返すつもりだ。
この様子じゃ、こいつはどっからか逃げてきたか、だろう。
もしかしたら、虐待でも受けてたのかもしれない。
小さい頃から、虐待を受けて教育やしつけをされていなかったといたら、それはこいつにとってもいいことじゃない。
幸い、ガキのあつかいにも、しつけもそんなに苦手じゃなかった。
まさか、俺のお兄ちゃん気質と保育実習の成果がここに出るとは思わなかったが…
俺がたつと、少女も付いてくる。
俺が冷蔵庫を開けて覗くと、一緒に覗き込む。
まるで、ひな鳥のようだ。
「大丈夫だよ。座ってな」
座る場所を指さしてやると、俺のほうを向いてそこに座った。
やっぱり、テレビを見るという習慣がなかったんだろうな。
「ぁー…なんかあったかな」
冷蔵庫と冷凍庫を覗く。
なるべく、土日などの暇な日に作り置きをしてるとはいえ…今日は金曜日だ。
作り置きがそこまで豪華じゃないことぐらい、俺が自覚している。奥のほうに作り置きのロールキャベツが残っていた。
冷凍だから腐るなんてことはないだろうが…最近作った記憶ないぞ。これ。
「ま、いっか・・・」
それと、冷凍してあったごはんをレンジに放り込む。
二つ一緒に入れているから、時間を長めに設定。
その間に、冷蔵庫に入っているトマトソースを鍋で温める。
少しにつまったところで、レンジが鳴った。
完全に溶けきっていないロールキャベツをトマトソースの入った鍋に入れる。
ご飯はもう少しだな。
ロールキャベツと一緒に入っていたコンソメスープが解け始めて、温まってきた。
あったまったご飯を茶碗によそり、深皿にロールキャベツをよそる。
出来上がったものをトレンチに乗せ、飲み物をそそぐ。
「よし・・・」
ちょっと味見をしたが、そこまで悪くはなかった。
短時間の割には、いい出来なんじゃないか?
トレンチに乗ったものをテーブルに乗せてやる。
「食べていいぞ。熱いから気をつけろ」
俺の目を見て、どうしようか迷ってる。
スプーンに一口とって、口に持っていってやる。
恐る恐る口をあけて、スプーンをくわえる。
「うまいか?」
俺がきくと、俺の手からスプーンがうばわれた。
急いで食べないととられてしまう。そんな食べ方だった。
よほどおなかがすいていたのか、それとも本当に奪い合うような環境だったのか。
なんか…俺の思想悪いほうに傾いてないか?
食べ終わると目の前から飛んできた。
なにがって、少女だ。
覚悟してなかった衝撃ゆえに、俺はそのまま倒れてしまった。
胸のあたりに、頭があるのがなんとなくわかる。
本当に俺はこいつをしつけなければならないのかもしれないと思った。
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