第11話微3
扉の開く音がする。
タオルで拭くことを教えてあってよかった。
ちゃんと体を拭いてるようだ。
布ずれする音がするので服も着ているようだ。
最初は言ったことを忘れてそのまま出てこないかと心配してたが、その心配がとりこし苦労だったってことで安心した。
安心して、テレビに目を向けると衝撃が来た。
まだ、湿気を帯びた髪が首筋にあたり、せっけんの匂いがした。
「はぁ・・・」
俺はため息をついた。
それと同時に安堵していた。
入浴したあと、結局はおびえて叫ぶとか、暴れるとか、またそのまま出てってしまったら、とかそういうことを考えていたけれど、この衝撃を受けてその心配も用済みだってことがわかった。
どうやら俺は、懐かれたのかもしれない。
女の子に懐かれるのは悪い気はしないな。
「俺の前に座りなさい」
注意すると、効果音がぴょこん♪とでもつきそうな軽さでおれの前に座り込んだ。
俺は息をのんだ。
さっきまでは、土埃だらけだったし、着ている服も汚かった。
髪だって土の色だと思っていた。
そうじゃなかったらしい。
肌も白くて、透き通るっていう表現がぴったりなんじゃないかって思った。
風呂上がりだから、その頬が上気しているのがまた色をつけているように思う。
俺のでかい服の上からでも、スラリとした手足であるということ、スタイルがいいということもよくわかった。
髪はきれいな飴色をしている。ただのぐしゃぐしゃなのかと思ったら、洗ってきれいにしてやるとかわいらしい。テンパなのだろうが、髪が長いためその重さで毛先以外はストレートに思えるくらい。
毛先だけがきれいに緩い縦巻きをしているようだった。
それと同じくらいきれいな瞳。
その瞳を縁取るまつげも長くてきれいにくるんとカールしている。
こうしてよく見てみると、すっごくかわいらしかった。
俺は、こんなかわいい子を拾ってきたのか?
俺が見とれていたからだろうか、少女が俺を覗き込んでいる。
「あ。。。あぁ、ごめん。っと、いくつか聞きたいことがあるんだけどいいか?」
少女はきょとんとして、それから笑顔でうなずいた。
「お前…もしかして、言葉がしゃべれないのか?」
うなずく。
「言葉がわからない?」
首を振った。
「声が出ない」
うなずいた。
「そうか」
俺がなでようと手を出すと、一瞬体をこわばらせた。
それは、気にしていなかったら、気付かないくらい小さく。
それでも、俺が手を引っ込めなかった。
「よしよし。なんで、声が出ないのか俺は知らないけど、しばらくここにいろよ」
きっと、さっき手を引っ込めたら、俺はこいつにずっと触れるのをためらった。
だから、ここは、相手が怖がろうと手を差し伸べるべきだと思ったんだ。
下心がないと言えば、まったくのウソになるけどな。
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