第19話 リバイバーズ
突然発覚した事実――前世の仲間とたまたま同じプレイヤー名だと思っていた部隊の仲間たちが、実は全員前世の記憶を引き継いでいたという事実に、一同は沈黙した。
が、昌香の乾いた笑いがそれを打ち消した。
「ハッ、合点がいったぜ。どいつもこいつも名前どころか性格まで似てると思ってたが、なんてことはねぇ、当の本人だったってことだ」
「私も、これで色々と腑に落ちました」
「私、私……! みなさんとまた会えてうれし」
「みんな!! すまなかったっ!!」
いきなり大声で謝り、深々と頭を下げる信太郎に、四人は驚いた。
「信太郎さ……あ、いえ、アインさ……えーと……信太郎さん、なにを……?」
「俺が……っ! 俺が最後の最後にバカやったせいで、お前らを死なせちまった! あの旅のあとにも、お前らの人生はまだまだ続いていくはずだったのに……!!」
「あっ……」
これが信太郎――アインがかつての人生で残してしまった唯一の後悔だった。
身体と口が勝手に動いていた。それほどまでに彼は謝りたかった。だがそれは無理だと思っていた。ほんのついさっきまで。
(それで、仲間が傷つくことを過剰に嫌っていたんですね。そこだけはかつてのアインさんと少しだけ違うように感じていたから……)
そのとき、昌香が信太郎に近づいた。
「おい、顔上げろ」
優しい声だった。
「マイ……」
「ふん!」
「ぶほぁ!?」
しかし次の瞬間には彼女のアッパーカットで宙に浮いていた。
「ちょっ、体罰ですよ!? 信太郎さんが聖闘士みたいに吹き飛んだじゃないですか!」
「あぁ? お前らがチクらなかったら済む話じゃねぇか」
殴った手の関節をゴキゴキ鳴らす姿は、もう教師というよりヤンキーにしか見えない。
「そもそもな、テメーにいくら謝られたところで、俺が手に入れるはずだった大金も戻ってこねぇし、女侍らせて豪遊も出来ねぇし、大金も戻ってこねぇんだよ」
でもな、と言葉を続ける。
「それでもこうして女の身になってわかったこともあんだよ……。同じ乳を揉んでも半年もすれば飽きる!」
「お前はなにを言っているんだ? というか話をどこに着地させたいんだ? ……だが、言いたいことなら俺もある。アメリにも、だがな」
そう言って一真が信太郎の前にしゃがみ込んだ。
「お前たちがいなければ、俺はあの森で魔物共に殺されていた。それがあのときまで先延ばしになっただけだ。だから……、ありがとう」
初めて見る一真の笑顔だった。
「やっと言えた」
「オイコラ。俺のあとにンなこと言ったらテメーの株爆上げじゃねぇか。ついでに俺の株爆下げじゃねぇか」
「あ、あのっ! 私も、あの旅のおかげで、ちょっとだけ……、ちょっとだけですけど、変わることが出来たって思ってます! だからっ、アインさんのこと、恨んだりなんかしていませんっ!」
利華――ハルも涙を浮かべながら訴えかける。
「お前ら……」
「私も、未練がないと言えば嘘になります。ですが、もう過ぎたことです。それでも貴方が自分を許せないというのなら……」
撫子は信太郎に手を差し伸べた。
「あのときの、あの宴の続きをここでしましょう。そして、この先もみんなで闘っていきましょう」
「……お前らがそう言ってくれるなら、そうだな」
信太郎はその手を掴んで立ち上がった。
「じゃあちょっとその辺でキノコ拾ってくるわ!」
「そこは反省してください!!」
※
「やはり、俺たちの住んでいる世界が球状だったというのは、かなり意外だったな」
「「わかるー!」」
お互いがかつての仲間だとわかった彼らは、『転生して知った衝撃的なことゲーム』を始めていた。
「自転車とか車とかさ、乗り物って超便利だよな」
「せいぜい馬車ぐらいでしたからね。新幹線とかで旅が出来れば、どれだけ効率的だったことか……」
そんなちょっとした旅行みたいな魔王討伐の旅など誰も見たいとは思わないだろうが。
「じゃあその……科学って、魔法よりも凄くないですか?」
「オイオイ、それお前が言っちゃうか? 元天才オッパイ魔法使い」
「だがたしかに、いまの方が利便性で言えば断然上だ」
「そもそも魔法が扱えるかどうかは先天性とか、絶対いらない設定だったよな」
「設定とか言ったらダメでしょう。でも、科学という意味ならネットは便利ですよね。簡単に情報が得られるんですから」
撫子のこの言葉に他の四人が沈黙する。
「あ、あの、私なにか変なこと言いましたか?」
「ネットかぁ……。ネットのせいかぁ……」
「だが妥当と言えば妥当だ。そういう目的のために発展したとも言えるからな」
「つまりコイツがむっつりスケベになったのはネットで色々知識増やしたからってことか」
「なっ……!?」
怒りと羞恥で撫子は顔を紅潮させる。
「たしかに、アメリさんって、その……昔はそんなに、え、エッチじゃなかったですよね……?」
「いまもです!」
「ならテメーら二人に聞くぞ。四十八と言えば?」
「アイドル」
「体位……ハッ!」
どっちがどっちの回答なのかはご想像にお任せしよう。
「そ、そもそも! なんでこんなゲームを始めたんですか!?」
「予想より早く今回の話が終わりそうだったから文字数稼ぎのために」
「えぇ……」
こうしてなんやかんやでオフ会はお開きとなり、なんやかんやでイベント当日を迎えた。
「三回目……って、なんかもういいや……」
※
限定ミッションが開始された直後。
五人はそれぞれの機体に乗り込み、格納庫にいた。
「設定完了しました。これで私たち以外の部隊が戦闘に介入することは出来ません」
「よーし、準備はいいか、お前ら?」
「問題ない」
「私も、各コンテナ、機体共に異常ありません」
ハルのアルフレッドは、曹魏との部隊戦のときからさらに大型コンテナを一つ追加していた。
「それよか、部隊名“アレ”でいいのかよ? 結局元ネタっぽくなっちまったけど?」
「いつまでも俺のIDってわけにもいかないだろ。それに、この名前が俺たちには一番ピッタリだしな」
アインはモニター越しに他の四人の機体を見た。
全員が良い顔をしている。
この仲間たちがいれば負ける気がしない。
「さぁ、行きましょう!」
「よっしゃ! 『
MISSION START!
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