第54話 いつまでも、一緒に
桜華、美波、英里奈の三人は千葉県浦安にある有名な遊園地に訪れていた。
その遊園地は内陸側と海沿いの二つに分かれており、三人は海沿いにある遊園地のチケットを取った。
「久しぶりだね。英里奈」
「ほんと、美波と会うのって去年の桜華の誕生日以来だね」
一年ぶりに会う二人は話に花を咲かせていたが、それをバッサリ切るように桜華が二人の手を取って走り出した。
「あっちにキャラクターのカチューシャがあるの。みんなでつけよう!」
人一倍はしゃぐ桜華に二人は呆れながらも桜華らしいと顔を合わせて笑っていた。
三人はお揃いのクマのカチューシャを購入し、早速つけた。
桜華が何枚も写真を撮る。
「そんなに撮られると恥ずかしいよ」
英里奈がクマの耳を押さえながら恥ずかしさに悶えていた。
三人はまず初めに乗り物で移動しながら、乗り物に付いている大砲のようなもので的を打っていく、シューティングゲームのアトラクションに乗る。
「三人で誰が一番高得点取れるか勝負しようよ」
「桜華、こういうシューティングゲーム苦手なくせに大丈夫?」
「じゃあ負けたら罰ゲームでポップコーン奢りね」
罰ゲームを英里奈に提案され、桜華は若干怖気付くも虚勢を張って三人で勝負することにした。
このアトラクションは3Dで楽しむため、乗る前に3Dメガネを渡された。
的を打つ時は乗り物は止まってくれるので速い乗り物が苦手な桜華も楽しめた。
最後にスクリーンに得点が表示された。
「やったー、私が一番」
一番は英里奈で二番が美波、そして最下位は――
「なんでさくらなの?!」
「「始まる前から分かってた」」
案の定桜華だった。
「だって桜華は高得点の的、狙わないじゃん」
「あんな一瞬しか出てこない的、英里奈みたいに全部狙えないよ」
桜華はポップコーンを奢らされ、不貞腐れていた。
この遊園地には八種類のポップコーンがあり、抹茶ホワイトチョコやミルクチョコ、カレーなどの珍しい味もある。
キャラクターのかわいい入れ物も買い、三人は食べ歩きをしながら次のアトラクションを決めた。
ポップコーンを一つ食べた時には、桜華の機嫌はいつもより良くなっていた。
次は亀のキャラクターと話せるアトラクションにした。
内装は客船の中をイメージしていて、五十人ほどが入れる室内で、正面のモニターに出てくる亀のキャラクターと座って話すことができる。
亀とはしっかりと受け答えした会話ができて、三人は声優がいるのかとそれぞれ考察していた。
「そうだなー、最後はクマのカチューシャをしたやつと話してみたいな。ここにクマのカチューシャをつけている人はいるかな?」
終盤、亀にクマのカチューシャをした人というお題が出て三人は目を見合って手を挙げた。
周りを見渡すと三人のみだった。
「お、三人もいるじゃねぇか!友達同士のように見えるが誰か一人俺と話す人を――」
亀が一人を決めてくれと言う前に一瞬、声が止まった。
「もしかして七里ヶ浜先生?!」
亀は英里奈を知っているのか声を荒らげて英里奈のペンネームを呼んだ。
「はい。あ、そういえばつい最近雑誌の取材で初めて顔出ししたんだった」
室内の何人かは「まじか!」など、驚きの声を出していた。
「俺、『俺ラノ』の大ファンで先生の絵がとっても大好きなんですよ。ちなみに『俺ラノ』っていうのは小説で、たまに人間が海に落とすから読むんだ」
亀はわからない人に向け、しっかりと設定を守りながら説明していて少し関心した。
他の人と話すより五分ほど長く英里奈一人と会話をして、最後に応援の言葉と宣伝をして亀と話すアトラクションは終わった。
次は待ち時間があまり長くない定番のコーヒーカップや、気球の形をした乗り物が宙を回るアトラクションに乗った。
二つのアトラクションがあるところは海をイメージしていて、所々サンゴ礁の装飾があったり、気球型の乗り物はクラゲが乗るところを持っていたりと、写真映えする場所だった。
三人は楽しい乗り物と美味しいポップコーンで時間を忘れていて、気づいた時には昼食も摂らずに二時を回っていた。
「ここの遊園地ってお酒が飲めるらしいよ。さくら昨日、美味しいところ調べたんだ」
「遊園地でお酒なんてなんか新鮮だね。最近は絵ばっか描いてて飲んでないからたまには飲みたいかも」
三人は桜華が調べてくれた美味しいお酒があるお店に向かった。
訪れたお店はメキシコ料理が中心で、内装も鉄骨と木でできていてメキシコをイメージさせられる。
そこで三人は桜華おすすめのクランベリーとライムのスパークリングカクテルを注文した。
コップはプラスチックでジョッキほどの大きさはない。
「それじゃあかんぱーい!」
「「乾杯!」」
桜華が乾杯の音頭をとると二人もそれに続いてコップをぶつけた。
「酸味があってスッキリしてて美味しい」
「ベリーとライムの果実感があるのもいいね」
二人はとても絶賛していて桜華はドヤ顔で胸を張っていた。
三人はゆっくり話しながら同じお酒を二杯飲み、次のアトラクションに向かった。
それからは酔った勢いなのかスピードが速い乗り物続きだった。
エレベーター型の乗り物に乗り、遊園地が一望できるほど高いマンションの頂上から落下するアトラクション、遺跡の建物内を高低差はないものの、猛スピードで駆け抜けるアトラクション、地底を探検する乗り物に乗り、最後に火山から落ちるアトラクションなどに乗った。
「もう無理だよ!これ以上は死んじゃうからー」
「仕方ないなー。もう夜だし桜華もこう言ってるからご飯にする?」
ぐったりとした桜華を見て英里奈が夕食を提案した。
「そうしよっか。夜のパレードに間に合わなくなっちゃうしね」
三人はパンフレットを見てレストランを決め、そこに向かった。
三人が訪れた店はフレンチ料理がメインのお店で、ワインがとても美味しいと書いてあった。
三人が注文したのは黒毛和牛のヒレステーキ、オマールエビのオープン焼き、ポテトサラダ。
桜華と美波は赤ワインで、英里奈は白ワインを注文した。
「昼もお酒飲んだけど、最後にこの遊園地に来たのは学生の時だからこうやってお酒を飲んで、落ち着いて友達と話すのって大人っぽくていいね」
「さくらもなんかやっと大人になったって感じがするよ」
美波と桜華がワインを嗜みながらしみじみと話していた。
「久しぶりにみんなとこうやって遊んで、お酒を飲んで、ご飯を食べれてよかった。ありがとう」
「そんなかしこまらないでよ。またいつでも三人で出かけようね」
美波の言葉に英里奈は笑って返したが、はっきりと返事はできなかった。
ご飯を食べ終わり、遊園地のキャラクターと写真を撮ったりした。
やがてパレードの時間になり、三人は見えやすい位置に移動した。
この遊園地のパレードは水上で行われ、キャラクターが水上を動く船に乗って歌に合わせて踊って喋るのだ。
夜景の中、煌びやかな船に乗ったキャラクター達が現れ、元気よく歌って踊っている。
最後には花火が上がった。
思わず手を叩いたり、キャラクターの名前を叫んでしまうほど一体感のあるパレードだった。
最後にお揃いのキーホルダー、お菓子、キャラクターがデザインされた日用品、お土産を買った。
楽しい時間はあっという間に過ぎて、三人は名残惜しそうに遊園地のゲートをくぐり、帰路についた。
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