第10章
帰宅してもその鉛は僕にのしかかる。このままじゃいけない、この鉛をどうにかしないと、そう思った僕はスマホのメッセージ作成画面を開いていた。なんて打てばいいかわからない。でも聞きたいことはたったひとつだけだった。だったら正直に聞いてみよう、真正面から向き合おう、そう決意し僕は文章を打ち始めた。
「こんばんは、高橋です。失礼なのは承知でご連絡させていただきました。今日の方って彼氏さんですか?」
真っすぐに、ただ真っすぐに、僕は気持ちをぶつけていた。どんな返信が来ても受け入れる覚悟を持って。返事は意外にもすぐ返ってきた。
「いいえ、今日の方はお友達です。高橋さんには誤解されたくないです」
最後の一文を読んだ時、僕の鉛のように重かった心がスーッと軽くなったのを感じた。安堵した僕は返信を送ったがいてもたってもいられなくなり、返信を待たずして彼女に電話をかけていた。
「あ、こんばんは!高橋です!あの、僕、今日本当に態度悪くて…直接謝りたくて電話しました!っていうのは無理矢理な理由で…声聞きたくて!」
気持ちが溢れて、もうめちゃくちゃだ。でも最後の一言が僕の本心だった。
「はい、私もちゃんとお話ししたかったです」
彼女の声は落ち着いて凛とした、そんな声だった。その声を聞いた僕は、コーヒーの香りに包まれたかのように安心していた。
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