第9章

それからというもの、シフトの関係で彼女と入れ違いになることも多く、なかなか会えない日々が続いていたそんなある日、彼女が来店した。扉を開ける彼女の姿を見た瞬間に心が舞い上がったが、そんなときはつかの間。次の瞬間には僕の心は鉛の様に重くなっていた。彼女は合コンの時によく話していた男性と一緒に来店したのだ。え…楓さんって…嫌な考えが頭の中を占める。苦しい。

「…いらっしゃいませ」

やばい、態度に出しすぎた、と焦った時にはもう遅かった。しかし楓さんから何か言いたそうだったので待っていると、彼女の後ろから「ハヤマ」さんと思われる男性が食い気味で注文してくる。彼女はその勢いに負け、結局なにも言うことはなかった。彼女の視線を感じたが、僕は目を合わせられなかった。彼女の顔を見ることができなかった。本当に心が鉛のようだ。

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