第5章

次の出勤日、彼女は今日もパソコンとにらめっこをしていた。よし!今日こそ声をかける!そう決意して、彼女の様子を伺いながら仕事をしていると、彼女のアイスカフェラテが減っているのを見た。新しいの持って行ってあげよう!そう思い、新しいアイスカフェラテを作っていると、

「それ、誰の分だ?」

と三好さんに声をかけられる。

「あ!いや!あの…これは…」

「ああ、あの子の分な。お会計は帰り際でいいって伝えときな」

と彼女の方を見て三好さんは言う。うそ、三好さんにバレてんじゃん!と少し焦った。しかし、

「はい!」

と言って会釈をし、彼女の席に向かう。どんな顔で渡せばいいだろう、と考えながら歩く速度が自然と速くなる。

 彼女が立ち上がった瞬間、僕はテーブルにそっとアイスカフェラテを置く。

「トールサイズのアイスカフェラテで合っていますよね?」

彼女は驚いたのか、アイスカフェラテを見つめたまま動かない。

「もう無くなりそうだったので新しいのを作っておきました!いつもご利用ありがとうございます!」

俺、自然に言えてるかな?と心配になりつつも声をかけた。彼女はハッとして、

「あ、450円!」

と値段を言った。僕はそんな彼女の焦り具合を可愛く感じ、つい吹き出してしまった。しかしすぐに訂正する。

「ふっ…あ、お会計は帰り際でいいですよ!」

彼女は今度はお礼を言って席に着く。恥ずかしかったのか下を向いていた。僕はそんな彼女を愛おしく思い、満面の笑みで、

「お仕事頑張ってくださいね!」

と全力エールを送った。その瞬間、彼女が初めて僕の顔を見た。目が合う。彼女はちょっと驚いた、でもどこか安心した顔をしたように見えたのは、僕の勘違いかもしれない。

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