第5章
私は濡れたミディアムヘアーを乾かしながら、今日一日のことを振り返っていた。カフェの店員さんの高橋さんは、あんな若々しい見た目で私のひとつ年上だったらしい。自分でも童顔だと笑って話してくれた。それからあのカフェは、学生時代からバイトとして働いていて店長に腕を見込まれ、そのまま正式に社員として働いているという。好きなカフェのメニューはキャラメルマキアート。これを聞いた時、私は思わずかわいい!と心の中で叫んでしまった。もちろんメニューの研究も一緒にした。どんなものが人気なのか、新しく開発するメニューはどんなものがいいのか、私たちは計3時間カフェで時間を共にした。思い返すとあっという間で、なんとも楽しい時間だった。
そして、帰り際に高橋さんの方から連絡先を聞かれお互いの連絡先を交換した。私はなんて送ればいいかわからず、未だにメッセージを送っていない。髪を乾かし終わったら文章を考えようと思っている。その瞬間、メッセージの受信を知らせる通知音が鳴った。
「今日はお付き合いただきありがとうございました!大変参考になりました!またお店でお待ちしております。 高橋 篤也」
彼からのかしこまった、しかし彼らしさもあるメッセージを見て、私は自然と笑顔になっていたのに気づく。篤也さんっていうんだ、と彼の下の名前が知れたことがなぜかものすごく嬉しかった。
「こちらこそ楽しい時間をありがとうございました。新作楽しみにしています。 鈴木 楓」
私は嬉しかった気持ちを隠すように、当たり障りのない返信を送りスマホの画面を閉じた。この時の胸の高鳴りが彼に対する恋心だと知るのは、もう少し先のことだ。
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