第6章
最近、メッセージの通知が異常に溜まる。原因は以前参加した合コンのグループが活発に動いていること。「夏は海に行こうよ!」「いいね!」「俺、車出すよ!」なんて具合の会話が繰り広げられている。そんな中、葉山さんが私に対してのメッセージを送ることが何回かあった。「楓ちゃんは海好き?」「楓ちゃんに聞いてみようよ」といちいち私の名前を出す。それが周りのみんなに変な印象を与えてしまったようだ。美咲から個人のメッセージで、
「葉山さん、楓推しっぽくてみんな応援ムードになっちゃってる…」
という報告がきた。私に好意を持ってくれるのは大変ありがたい。しかし正直、葉山さんに対しての印象はいいものではなかった。個人的な誘いが来そうな雰囲気もあるので、どう回避するかを最近はずっと考えている。まあ、誘われたわけじゃないから考えなくていいか…とその時は考えるのを放棄した。
しかし誘われるのは時間の問題だったようだ。三日後には葉山さんから個人のメッセージが来るようになった。
「楓ちゃん、水族館とか好きじゃない?良かったら一緒に行こうよ!」
とド直球な誘い文句で誘われた。これほどに断りにくい誘われ方はない。でも葉山さんに対してネガティブな印象なのは、自分の先入観かもしれないという気持ちも拭えなかった。行くだけ行ってみる?と自分に問うて、私は結局誘いに応えた。
葉山さんとの水族館の日、私はいつも通りのシンプルな服装で待ち合わせ場所にいた。葉山さんがやってきて早速水族館を回るが、魚やペンギンがかわいいこと以外、私の心の中にプラスの感情が生まれることは今のところない。水族館を回り終わると、私たちは合コンを行ったいつもの行きつけのカフェに行くことになった。店内に入ると真っ先に高橋さんを見つけた。彼と目が合う。彼の笑顔が一瞬で消える。
「…いらっしゃいませ」
明らかに元気がない彼。私が声をかけようと思ったその瞬間、後ろから葉山さんが、
「俺、コーヒー!ブラックね!」
と注文をする。私はその遮りにより、高橋さんに話しかけるタイミングを完全に失ってしまった。
「あ、私はアイスカフェラテで…」
「…かしこまりました」
注文を終えた葉山さんは席を探しに行った。高橋さんと私の間で微妙な空気が流れる。嫌だな、この感じ…そう思いながら会計を進める高橋さんを見つめた。私はこのモヤモヤの原因を探す。その答えはあまりにも簡単に私の中に存在していた。ああ、私、他の男性といるところをこの人に見られたくないんだ。なんだそれ、まるで高橋さんのこと好きみたい…この時に私ははじめて自分の彼に対する恋心に気づいた。けれど、そのことに気づいたからと言ってこのモヤモヤは消えない。その後の葉山さんとの会話は、申し訳ないがほとんど覚えていなかった。
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