第4章
なんで今ここにいるの?と思いながらカフェの店員さんに言われた通り、私は新宿駅の南口にいた。自分でも理由はわからないが、昨日の合コンのために着て行った服よりほんの少しだけ気合いを入れた服に身を包み、私は彼を待つ。
「楓さーん!お待たせしました!」
元気な声の主は、見るまでもなく店員さんだとわかる。
「僕の方が早く着きたかったのに。楓さん何分前に着いたんですか!」
なんて言いながら、彼は屈託のないあの笑顔を披露する。その後も、なんでそんなに元気なの?と思うくらいハイテンションで話す彼に私はついていった。私たちが向かった先は新宿で一番人気のカフェ。
「ここのメニューを参考にしてこいって店長に言われて…でも一人で飲むにはメニューが豊富すぎたので、誰かと一緒に来れればと思っていたんですよね!」
と言った彼は一気に3つの飲み物を注文した。
「あ、楓さんは好きなものを1つ頼んでもらえれば大丈夫ですよ!」
と言われたので今日は遠慮せずに大好きなアイスカフェラテを頼んだ。私たちは各々の飲み物を手に席を探す。しかし祝日とあってカフェは大盛況だった。それでも何とか空いている席を見つけ、二人は向かい合って座る。
「だいぶ混んでますね!楓さんは人混み大丈夫ですか?」
彼はなぜかニコニコしながら聞いてくる。なんでそんなご機嫌なの?とさっきから思っていた気持ちを持ちつつ、
「私は人混みはあんまり得意じゃないですね…」
「え、ごめんなさい!こんな人の多い所に付き合わせてしまって」
珍しく彼の語尾に元気がない。そのシュンとした姿を見て、私は思わず吹き出してしまった。
「え?え?僕、なんか変なこと言いましたか?」
「あ、いえ!高橋さんでもそんな落ち込むことあるんですね。初めてお会いした時からずっと、元気な姿しか見ていなかったので」
私達は一瞬お互いの顔を見て、一度そらし、もう一度目を合わせては同じタイミングで笑った。なんとなくだけど、このゆっくりと流れるひと時が心地よく愛おしいと感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます