第5話 パンツ……見たい? episode 5
「そんじゃ、明日とは言わず今から行こうか」
「えっ、今からですか? 私洗濯物もあるし」
「ああ、でもまだ時間は十分にある。干してからでもいいんじゃねぇのか」
「そ、そうですか……」
ちょっと、ちょっと。いきなりこんな展開になる何んて思っても見ていなかったわよ。
ほんとはさ、ダメ元で先輩と洗濯機選べたらなぁって思っていただけなんだけど。ほら、なんか洗濯機とか家電物を二人で……まぁー、この際繭ちゃんはいいとして。選びたかったんだよねぇ。なんか新婚生活が始まる様な感じがしてさ、新鮮。ううん、夢見てたんだよ。
ああ、洗濯機壊れてくれてありがとう。
「ねぇねぇ、水瀬さん。にヘラとして顔閉まりなくなっているよ。もしかして、洗濯機壊れて一緒に行けることそんなにうれしんだ。ふぅーん、そうかそうか。何なら洗濯機買わないでここに洗濯毎日ここに来たいな。なんて下心もっていないよね」
げっ! あうううううう! その手があったか。
しまった!
「あ――やべ! そうなったら、こっちが大変だ」
「んっもう何が大変なんですか先輩」
「いやべ、別に」
だよね。そんなことしているうちにパンツなんかこの部屋で干されちゃったら、どうすんの!!
わ、私だってまだこの部屋にパンツなんか干したことないんだからね……水瀬さん。
うううう――ん。想像しちゃった。
あのベランダのハンガーに浩太さんと私のパンツが一緒に干されている。
二人のパンツが風にひらひらと揺れている。
……二人のパンツが――――はっ! なんだか物凄く恥ずかしい。
「あれぇ――どうしちゃったのかなぁ。繭ちゃん。顔赤いよ」
「な、何でもないです」
「さては何か変なこと考えていたんでしょ」
「か、考えてなんかいません」
「ああ、なんかむきになるとこがあやしいなぁ」
「そう言う水瀬さんだってさっき自分の世界に入っていたんじゃないですか?」
「えっ! 、そうなの? そうかなぁ――」
「そうですよ」
絶対そうだよ。
「あのなぁ、お前たちなんか今日はほんと変だぞ。もしかしてあの日なのか?」
私達はまた声をそろえて「違います!」とはもってしまった。
今日はなぜか水瀬さんと合わさってしまう。
やっぱり浩太さんが言うように変なのかなぁ。
ちらっとディスプレイを見つめ、このゲームのせいかなぁ。なんて思う自分が無性に空しく感じる。
なんでゲームのせいにするんだよ。
はっ、なんか変なの。変な気分。もやもやが晴れないっていうか、何かが引っかかっているんだよ、この胸の中で。
やんなちゃう。
「そ、それじゃ私、急いで洗濯物干してきますから待っていてくれますか!」
「ああ、大丈夫だ。そうだ、どうせなら買い物終わったら3人でたまには飯でも食いに行かねぇか」
「……ごはん? 昼ごはん?」
「んー、正直今はあんまり腹減ってねぇだけど、できれば夕食兼用かもな」
「そっかぁ」
「なんだよ繭。今日は何かあったのか?」
「べ、別に特別あるわけじゃないんだけど。夕食なら私作るけど」
「いいじゃねぇかたまには。お前あんまり乗り気じゃねぇのか?」
「別にそんなじゃないんだけどさ」
ちょっとむすっとした感じに言ったのが気にさわったのかな
「無理とは言わねぇけどな」
「無理じゃないけど」
「ふぅ―――――ん。そうか」
と、流すように浩太さんは返事をした。
「とにかく私行ってきますね」そんなちょっと険悪な感じの空気が漂いだしたところを割くように水瀬さんは急いて洗濯籠をもって自分の家へと戻った。
水瀬さんがいなくなり、なんとなくしんと静まり返った部屋の中で私と浩太さんが二人、ちょっとぎくしゃくした感じで取り残された。
このまま、なんかこうしていたら、また何言うかわかないから、とりあえず台所へを言って冷蔵庫でも開けて中の様子を再確認しようとした時、三和土に何か落ちているのが目に入った。
なんだろうと思い、三和土に落ちているものを拾い上げるとそれは……パンツ。
えっ! パンツ。白のパンティ。無印の何もないシンプルなパンティ。でもこの肌触りはしっとりとした肌触り。
シンプルだけど多分、いいものなんだというのがよくわかちゃう。
そうだよ。こういうの。いいなぁ。
でも高そうだね。
下着にそんなにもお金かけられないよね。
でも……。
「ん、どうした繭?」
「へっ?」
そんな私の姿を浩太さんが目にしていた。
「な、何でもないよ」そう言いながら、さっと手にしていた水瀬さんのパンティをスカートのポケットに入れて。
「わ、私ちょっと部屋に行ってくる」
「ああ、そうか」と言いながら浩太さんはトイレのドアをぱたんと閉めた。
三和土にあるサンダルを履き、あわてて、自分の部屋に戻った。
胸がドキドキしている。な、なんで。
自分のじゃないのに。
自分のじゃないから余計にドキドキしているんだろうか。
もしかして男の人ってこんな感じにドキドキするのかな。
もし、浩太さんがこれ見たらどう思うんだろう。
それより水瀬さん、恥ずかしいよね。
……多分だけど。
ポケットから取り出して、両手に持って広げてみた。
うん、こういうの買ってみよう。
そう思いながら、とりあえず――――部屋のハンガーにつるして干した。
でも水瀬さん。落としたの気づいているかな?
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