特別編 第14話 あのね本当は……。雨宮マリナ ACT 1
私の名は雨宮マリナ。父親は日本人。母親がアメリカ人のハーフ。
もっとも容姿は母親似。
で、性格がたぶん二人の最もいけない部分をそのままコピーされてしまったようだ。
そのもっともいけない部分というのは。……ちょっと口に出すのが恥ずかしい。
だがあえて言う。
異常なほど性欲が強いのだ。
だからといい、誰構わず相手をするということではない。
私にだって好みはある。いやいや好みというかフィーリング重視だ。
母親似のおかげで、外見、ボディーはまぁ、その何だろうか不細工! ではないと自分で言うのは鼻にかけているようでいささか恐縮してしまうが、言い寄ってくる男どもは今まで数知れない。……自慢のように聞こえるが実際そうだったのだから仕方がない。
自分たちが性欲の権化。とまで言っていいのか自分の親たちを。と思うが、たぶんその欲のせいでかなりの失敗と苦い経験をしたことがあるのだろう。私には恋愛については厳しかった。特に性、これに関することは母親は厳しく私にしつけていた。
しかしだ。自分たちも性欲が人並み以上に強いのに、娘にはその性欲を封じ込めようとするのはナンセンスなこと。
親にばれないように男の人と(このときは同年代の男子)付き合っていたこともある。しかし、貞操観念はいくら性欲が強くともなぜかあった。
付き合っていて楽しい子も多くいた。フィーリング的にドンピシャだと思う子もいた。それならばすべてをあげたっていい、と、思うこともしばしばあったが、最後までは至らなかった。
これも母親の教育のおかげ? と、言っていいのかどうかは今はわからない。
実際、私が男を知ったのは大学に入ってからだ。
女友達のほとんどは、早い子でミドル、普通ハイスクールのときにはほとんどの子が経験済みだった。
焦る気持ちがないといえばそれは嘘になるが、結果、私は大学に入る前まではバージンであったことは事実だ。
まぁそれは過去のことだもういいとして、今のことだ。
大学を卒業して、今の会社で本格的にワーキングしだしたとき、この仕事の面白さに取りつかれてしまった。
急速に伸びているこの仕事。自分のコンサルがまともに注目されるこの興奮と歓喜。性欲よりももっと快感を味わうことができた。
気が付けば、お年頃の年齢はとうに過ぎ、子供がいてもおかしくない年齢になっている。
その引き換えに会社では、若くして重役というポストを得たわけだけど。
実力主義ていうのは私にとってとてもいい環境だ。
一応この会社は日本に本社というものがある。しかし、実際の実権は私がいるこのアメリカのカンパニーが実権を握っている。
本社で大幅な人事異動があることを聞いたとき、私の身柄はすでに日本に向けて準備が進められていた。
本社のてこ入れ。業績が落ち始めてきている日本。このヘッドクオーターの立て直しを命ぜられたのだ。
最も私の業務自体が、本社直結というのが一番の理由らしい。それに日本語も話せるとなれば、白羽の矢はたたれて当然。
日本本社には何度も来ているし、社内の状態も把握できている。正直なところ、
オフィスの場所とブレインが変わるだけで、一から何かを始めなければいけないというわけでもない。
本社の総括部長
業務の引継ぎもあり、ワークスペースを村木部長と共有してから私は山田という社員に目を付けた。
なぜ、山田という社員に目を付けたのか。それは村木部長のファイルに彼の名がしばしば出てきていたからだ。
「なんでこの山田浩太という社員の名前が上がってくるんだろうね」
初めは単なる偶然かと思っていたが、こう頻繁にその名があがってくると村木部長の意図的な何かを感じ始めてくる。
ある日、村木部長にこの山田浩太という人物のことを聞き出した。
「ねぇねぇ、村木さん。この山田浩太ていう社員のことなんだけど。もしかして村木さんのお気に入りの部下なの?」
「ああ、此奴か。そうだな、苛めるのが面白いやつだな」
「苛める? 村木さんこの社員嫌いなんだ」
「あははは、嫌いか? 嫌いだったら俺はネグレクトしているだろうな。彼奴は今、ちょっとつまずいているんだ。人生で一番大事な時につまずいているんだよ。そんな彼奴をほっとけなくてな。俺が仙台に行く前に何とかしてあげたいんだが、まだ時間がかかるようだ。それが心残りだ」
「ふぅーん。じゃ、村木さんのお気に入りなんだ。その社員」
「ああ、まぁな。かわいい奴だよ」
そんな会話をしながら、本社の監視カメラをちょっとハッキング!
「ふぅーん、この人かぁ。ほんとなんか、かわいい」
それがきっかけかな、浩太に興味を持ったのは。
でね、日本に行く前にじっくりと、この山田浩太って男を見続けてたというわけ。
ほんとかわいい。モニター越しに見ていて、私のいけない欲がむらむらと湧き出してきちゃった。
性欲の権化の親から生まれた娘。
表向きは企業の重役。凛としたところを見せないと。
でもね、幼いころに抑圧された本能はそのままそっくりこんな年になってもまだ残っているんだよ。
山田浩太。
会う前から、なんか本気モード炸裂しそうなんだけど。
ごめんねマミー。私、日本に行ったら我慢できないかもしれない。
でもいいよね。
これが本当の……。
雨宮マリナ。なんだもの。
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