第85話 前略、枷とお願いと
「やっぱりー、こっちで合ってたみたいですねー」
あたしたちは話し合った。もしも『召喚術』が完成しているのなら、あの状況で魔力切れと言って退きはしないだろう。
それならどこかで力を蓄えてるはずだ。ポムポムは森をぬけた山々、そのどこかだと言った。
ならそこを見つけて、叩こうと言うわけだ。
案の定、それを防ぐためにトカゲが放たれていた。
「リリアン、それじゃあ作戦通りにお願いできる?」
「…………」
リリアンはポムポムの部屋からここまで、一言も話さずについてきていた。
何か迷うように、自分の手枷と鎖を見ながら。
その迷いがとても深刻なものに感じたので、あたしも話しかけなかった。
「リリアン?」
「…………」
反応がない、もしかしたら具合が悪いのかな?
「……すみません、少し考え事を、三つほど伝えておきます」
なんだろう、もし不調なら休んでほしいけど。
「もし……もしもの時は、最悪の事態になる前にこの枷を外します」
……今なんて?それ外れるの?
ありがたい話だ。でも、リリアンがその枷を疎ましく思っていないのは知っている。むしろ大事に思っているのも。
自分の力の大半を封じてもこれまで外さなかった、そしてこれからも外したくないはずだ。
「ありがとう、でもそうならないように頑張るよ」
リリアンの大切なものなら守ろう。難しくても、頑張ることはできる。
「あの娘をお願いします。きっと見た目よりも幼いはずですから」
あの娘……シトリーのことだろうか、このまま進めばまた会うことになるだろう。
一度戦ったリリアンは何か思うことがあるんだろか、幼いという言葉は気になるけど。
「りょーかい、任せて。もう一つは?」
トカゲたちも少しづつ距離を詰めてくる、あまり時間はない。
「死なないで下さい」
一言残してリリアンは別方向に走っていった。相変わらず足枷と鎖を感じさせない速さだった。
リリアンはラルム君がいるのはどの山なのか、そして目的の山に張られているだろう結界を破りに行った。
なぜ魔術師のポムポムではなくてリリアンなのか。それはポムポムが『壊すのは得意ですけどー、探すのは苦手なんですー』なんて言うからだ。
「だってさポムポム、死ねないね」
「死ぬ気はないですよー、それにだれも死なせる気もー」
大きな杖をくるくると回しながら、感情を感じさせない声で言う、格好いいセリフを。
「よし!ならいこうか!……そういえばポムポムはどんな魔術が得意なの?」
ポムポムも魔術師なら、得意な事や自分だけの魔術があるだろう。
あたしに魔術をかけて強化とかしてくれないだろうか、もし後方支援が得意なら最初からその考えで動こう。
「今から見せますよー」
「なるほど、楽しみに……」
してるよ、そう続ける前にポムポムはトカゲに向かって走り出した、超スピードで。
「……ポムストライク」
何かを呟いて、大きな杖を大きく振るいあげる。
そして振り下ろされた杖は、トカゲを吹き飛ばした。跡形もなく。
「………………」
言葉がでない。あぁ、壊すのは得意ってそういうやつね……
魔術(物理)……あんなに詳しかったのに……
っと、いつまでも固まってるわけにはいかないね。あたしも戦わなくては。
「そんじゃあいっちょいきますかー!」
あたしもカラフルな魔術師(物理)に続くことにした。
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