第86話 前略、魔術師とままならないと
「相変わらず!かったいなぁ!」
前回と同様にトカゲの鱗は固く、あたしの剣を通さない。
いや、毎度のことながらそもそも斬れないんだけどさ。
「こんな時は、こんな時だけはまともな剣が羨ましい!」
なかなか致命打にならない。リリアンと一緒に戦った時も思ったが、倒すペースに差がある。
ポムポムは……と目をそちらにやると。
「……ちょっと自信なくすかも」
強い。あんな見た目なのに、リリアンと剣と同じく杖の一振りでトカゲを倒していく。
いや、本当に凄いね。あんな見た目なのに。
「あたしも頑張るか!出来る限り!」
武器が弱い以前にあたしがそもそも弱いのだ。でもなんとか戦えてる。
そしてなぜみんなで目的の山を探さずに、あたしとポムポムがトカゲ退治をしているのか。
待っているのだ、もう一人の不確定要素を。
シトリー、ラルム君に付き従う謎のゴスロリ。
ドラゴンとの戦いの中で乱入されては困る。リリアンと打ち合えるくらいの実力があるのだ。
多分、出てくると思う。確証はないけど。
だからあたしたちがいることをアピールしている、今あたしたちを倒さなきゃ、すぐに行くぞと。
「あー!もう、本当に硬い!」
それでも本当にトカゲが硬い、時間がかかりすぎる。
「ねぇ!ポムポム!」
少し遠くにいるポムポムに声をかける、あ、失敗したかも。
「なんですかー」
なるほど、強く声をかければ、はいポムポム、は返ってこないのか。勉強になった。
「ないの!魔術での強化とか!あたし弱いよ!」
自分で弱いよ、というのは悲しいけど事実だ。それに、もしあるならかかってみたい。
「ないですー、そうゆうの使えませんー」
残念だ、でもないなら仕方ない!
「なら少し下がっていいよ、ずっと杖振るのは疲れるでしょ」
後ろで攻撃の魔術を使って援護してくれれば、魔術師はあまり身体が強い印象はない。
ずっと前線にいるのは辛いだろう。これでも魔術師一緒に戦った事もあるのだ任せてほしい。
「ご心配なくー」
そう言ってまた何かも呟きながら杖を振るう。
……いやこれ言ってるな、『ポムストライク』って言ってるな。
「ねぇ、ポムポム」
「はい、ポムポム」
「『ポムストライク』って言ってるよね」
「『ポムストライク』って言ってますねー」
……ダサっ!
「ポムポムもダサいと思いますよー」
意外だ、自覚があるんだね。
そうゆう名前をつける人は、大体自覚がないものなんだけど。
「いや!なら『ラグナロク』見せてよ!」
そうだ、あんなに格好いい名前の必殺技があるんだから!『ポムストライク』なんかよりもそっちが見たい!
「仕方ないですねー」
ポムポムは、そのまま大きな杖を大きく振り上げて。
振り下ろし、トカゲを吹き飛ばした。
「『ポムストライク』じゃん!!!」
杖に魔力を込めて殴る、単純な暴力だった。
「違うやつ!違うやつ!」
「仕方ないですねー」
その後、同じツッコミが二度響いたのは言うまでもない。
「全部杖で殴ってるだけじゃん!」
違う!あたしの知ってる魔術師と違う!
このモヤモヤを払うために剣を振る。まさかの物理攻撃二人組だった、魔術師の学園なのに。
「仕方ないんですよー」
「仕方ないってなにがさ」
もう、知らない。そんな気持ちを込めて、素っ気なく返す。
ポムポムはそんな対応を気にするわけもなく、トカゲを蹴散らしながら、当たり前のように。
「ポムポムはー、魔術使えないんですよー」
あたしは……思った。そしてそのまま口にした。
「そんな大事なことなら最初に言ってよ!!!」
あたしの仲間はままならない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます