第18話 前略、撤退と仕切り直しと

「とうっ!」「せいっ!」「はっ!」


 三者三様の掛け声で魔物を倒す。仲間がいるって頼もしい!

 ……助けられてばかりだけど。


「いいなぁ、魔術とか銃とか。羨ましいよ」


「ふふん、格好いいでしょ!」


 見せびらかすように銃を回すリッカ、くるくるくるくる、格好良い。

 道中、お互いの武器やスキルの話しになる、知っておけば連携しやすいしね。


 曰く、リッカのスキルボードは銃に特化させた変化をしたらしい。リロード技術や弾の作製、また撃ち方の技術などにポイントをつぎ込んだとのこと。


 スキルで特化させて、本人の努力で格闘スキルを身につける。言動でアホだと思ってしまったが、実に考えられた構成に思わず感心。


「あとちょっとで、新しいスキルがとれそうなんだ、それで新必殺技を作るつもり!」


「新必殺技……いい響きだね!」


 新しいスキルか……あたしは自分で勝手にポイントを使うことを止めれてるからなぁ……


 実は少し前に???マスを埋めたら【キッチン用品-D】のスキルを引き、リリアンにとんでもなく冷たい目で見られた。

 ゆえに、そこそこ経験を積んだつもりだけど、残ポイントは10前後しかない。


「D……?あぁなるほど」


 ラルム君が何か察したように言う。やっぱり低いんだよね?Dって。


「いやでも、やっぱり魔術だよね!魔術!」


 あたし使えないからさぁ〜、とリッカ、それに関しては同意見。

 こんなファンタジーな……いやファンタジーにしては元の世界のものが多すぎる異世界でも、やはり魔術は格好良い。

 にしても魔術か、些細な問題どけど魔法じゃないんだね、ネオスティアでは。


「確かに……魔術っていいよね。ここまで来るときも炎やら水やら雷やらでてきたし」


「ありがとうございます。でもそこまで便利なことばかりではありませんよ?」


 そう言うとラルム君は魔術について教えてくれた。

 基礎となる魔術だけでも、それを実戦で使えるようになるにはかなりの訓練が必要らしい。


 そして、基礎ができたら今度は他の魔術、スキルと組み合わせ、自分の魔術を作るらしい。この自分の魔術ができて魔術師は1人前とよべるとのこと。

 なかなか魔術も奥が深い。


「じゃあ『召喚術』ってのは?」


 気になって問いかける。基礎って感じはしないけど?


「『召喚術』は、その名の通り遠く離れた場所から何かを呼び寄せる魔術です。これを極めれば別の時間軸や別の世界からの召喚も可能でしょう」


 ただ……と前置いて、ラルム君は話しを続ける。

 少し俯いたその姿は、少し物悲しい。


「使い手があまりおらず、いたとしても小規模なもので……ネオスティアにおいては諦められている学問なんです」


 残念ながら……と、肩を落とし、続けるラルム君。

 なんだか悲しい、とってもロマンのあることなのに……

 やっぱり学問となるとそうも言ってられないのかな?なんとも夢がない。


「それでも諦める気はしないんでしょ?」


 一緒に話しを、聞いていたリッカが言う。

 その言葉に親近感を覚える。


「もちろんです。僕には夢がありますから」


 力強く、夢があると言い切るラルム君。いい言葉だ。それは是非とも聞いてみたい。

 少し待って、照れくさそうに話しだす。


「僕の夢はドラゴンを召喚することです」


「「ドラゴン!!」」


 思わずハモるあたしとリッカ。それはスゴイ!ファンタジーにはドラゴンだよね!

 身を乗り出して、次の言葉を待つ。


「子供の頃に憧れたんです、いつかドラゴンの背に乗って、冒険がしたいって!」


 熱くなり子供のように語るラルム君。

 とてもいい夢だ、それは絶対に叶えてほしい。


「その為にも遺跡調査、頑張ろうか。それでいつかあたしも乗せてね」


 あたしもあたしも〜とリッカ、考える事は一緒だった。


「てかセツナのスキルも不思議だよね」


 うっ……あまり触れられたくない話題。

 今のところ便利ってだけのスキルに、9999ポイント使った話はあまりしたくない。


「確かに……どういったスキルなんでしょうかセツナさん」


「あぁーーえっと……」


 いい誤魔化しが思いつかず、観念して【ウエポンチェンジ】について話す。さて反応は……?


「便利だけど……」「便利ですけど……」


「9999ポイントかぁ(ですか)……」


「だよね!わかってた!」


 遠い目をする2人。悲しい!あらためて悲しい!

 そんな茶番を繰り返しながら、目的地にたどり着いたんだけど…


「岩……?」


 遺跡の入口には大きな岩があり、誰も入ることができないようになっていた。


 何度か叩いたり、切ったり燃やしたりしてみたけど、あまりに大きな岩はまるで壊れなかった。


「そういうことですか……」


「なにか策がある?」


 なにかに気づいたようなラルム君。周りを見渡して。


「いえ、岩は壊せませんが、魔物に囲まれてます」


 言われて気づく、いつの間にか囲まれてる!


「おそらく何者かが遺跡を封じ、それをどかそうとする者達を襲っているのでしょう」


 つまり……


「全力退避ーーー!!!」


「「異議なし!!」」


 あたしたちは全力で逃げ出した!しかし回り込まれてしまった!だが!押し通る!!!


 逃げると決めてからの、チームワークはすごかった、結果として、誰一人負傷なく逃げ出せたが。

 遺跡に関する問題はなにも解決できなかった。

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