第17話 前略、あたしと銃士と魔術師と

「イケメンだぁーー!」


 ネオスティアにきてからというもの、癖の強い人ばっかりだったあたしの目に突然現れたイケメン。


 思い返せば、可愛いノノちゃんは大分失礼だったし、キレイなナナさんは抜けてるところがあった。

 リッカはアホだし、孤高なる暗黒騎士は人かどうかわからないし、ギンはパツキンの不良だし、極めつけに見た目だけメイド(悪魔)のリリアン。


 あたしはこれまで関わった人たちを頭の中で並べてく、みんなどこかしらに問題を抱えている。

 ただのイケメンなんてありえない、そうありえないのだ。


「ありがとございます。セツナさんも可愛らしいですよ」


 対応まで……完璧……!!

 青い髪、元の世界で見るなら、違和感の塊だろうけど、その爽やかな顔つき、涼し気な雰囲気が違和感を感じさせない。

 その白いローブは、物語の魔法使いを思わせる。

 まともな人の登場に、あたしはガッツポーズ。

 

「ごめん、取り乱しちゃったよ。今までちょっと頭が飛んじゃってる人としか会わなかったからさ……」


「それは……」


 心配するように眉をひそめるラルム君の声。よかった、普通の会話だ。


「待ちなさい」


 心を落ち着かせ、掲げた腕を降ろしたあたしに突然のリリアン、今はこのまともな会話を続けたいのに。


「飛んじゃってる人たちしか?私がいるでしょう。あなたをたくましく鍛えあげ、美味しい料理を振る舞い、気立てよく、見た目麗しい完璧なメイドの私が」


 特訓(拷問)料理(拷問)見た目麗しい完璧メイド(服装だけ、枷、鎖付き)正直1番ヤバイ奴である。


「正直1番ヤバイ奴である」


「フッ!」


 〜〜〜〜〜〜っ!!!ついでてしまった心の声に、あたしの足の小指を全力で踏みぬくリリアン。


 こ、声が……でない……!


「もう1度聞きます。完璧なメイドな?」


 うずくまるあたしに、リリアンは顔を近づける……

 悪いけど……!あたしには……!譲れないものがある……!


「悪いけど、ラルム君にメイド服を着せたほうが、いいメイドになると思うよ!」


「セツナさん!?」


「わかりました。久しぶりにこれを味わいたいようですね」


 どこからか、あの黒い大剣を取り出すリリアン。あ、死んだ。


「待って下さい!セツナさん!リリアンさん!」


 間に入り、リリアンの蛮行を、止めようとしてくれるラルム君。

 あまりに常識的な対応に忘れかけてた常識が蘇る、争い、良くない!


「覚えてなさい」


 と言葉を残してどこかに行くリリアン。ひとまず危機は去ったようだ。

 あたしは胸をなでおろす、そうだ、お礼を言わなくちゃね。


「ありがとうラルム君、今度メイド服で嫁に来てくれる?」


「嫌ですよ!?」


 おっと間違えた、まぁいいか。

 というか振られたぞ、おい天使、ハーレムはどうした。


「い、依頼の話をしますね」


 話題を変えられる、そうだこんな茶番で時間を使うわけにはいかない。


 依頼は簡単な内容だった。この街の近くにあまり盛んではない魔法『召喚術』について書かれた遺跡があるらしい。


 『召喚術』というのははラルム君の専攻している魔法らしい。


「学園の方が休みの内に研究を進めておきたいんです」


「魔法の学園かぁ、いつか見てみたいな」


 いいなぁ、ラルム君の話しに夢が広がる。

 あたしも魔法使いたいな、手を前に、火を出すポーズ。


「いつでも案内しますよ」


 ありがと。それでその遺跡での調査に、一緒に戦うメンバーが必要らしい。

 報酬は非常に少ないが、遺跡内や道中で好きに採取することがパーティー名義でできるらしい。


「依頼というよりは、一緒に遺跡調査しませんか?という誘いみたいなものですね」


「なるほど、願ったりだよ」


 こちらとしても、いろいろ見て回れるのはいい経験になるだろう。ただ戦力的にあたしで護衛できるのかな?


「話しは聞かせてもらった!」


 バン!と扉が開かれる。リッカ?

 見れば、元気よく扉を開くリッカがいた、危ないので、扉はゆっくりと開けよう。


「あたしも行くよ!遺跡調査!」


 それは嬉しいけど……


「大丈夫?悪人とかいないけど」


「賞金稼ぎは引退したわ……」


 目をそらすリッカ。うん、情けない。

 まぁでもリッカは強いし、こちらとしてもありがたい。ついでに護身術とか教えてほしいけど。


「よろしくね!ラルム!」


「よろしくお願いしますね。えっとリッカさん?」


 すぐさま打ち解ける、こうゆう時にリッカの人柄はとても便利だ。

 さてさて、これで万全かな?


「それじゃあ初クエストといきますか」


 軽く号令をかけて、あたしたちは初めてのクエストに挑むのだった。

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