第121話 大魔王『ハムザサール』2
広間の壁にかかった大鏡にリフレクターをたたきつけたが鈍い音が響いただけで全く割れそうもなかった。そのかわり、
『誰だ、わしの眠りを妨げる
本当の声だったのか頭の中にひびいただけだったのかは分からないが鏡の中からかすれたような声が響いた。
「ダークンさんです」
誰だと聞かれたので、アズランが
俺は鏡から一歩離れ、リフレクターを左手で持ち、右の腰からエクスキューショナーを抜き放って注意深く構えを取った。リンガレングは俺たちの後ろで控えている。
鏡の中から何かが出てくる。
鏡の
見ていると、今度は金色の靴を履いた片足が鏡からにょきりとこちら側に延ばされて床に足をついた。
そして、金の
椅子に座っていたミイラそっくりな男?がそこに立っていた。右手にはこれも金色の金属でできた背丈ほどのやや細めの棒を杖のように持っている。棒の上には大き目の丸い透明の玉がついていた。いかにも
『こいつが「ハムザサール」なのか?』
「おそらく」
「こうして、干からびたまま動いているところを見ると、大魔王はリッチなのかもしれませんね」
『うん? ほう、これはこれは、わざわざわしのところにあいさつに来たのか? 新しき魔王よ』
俺の方を向いてミイラが俺のことを『魔王』と呼ぶ。
『おっさんなのか
「同じくトルシェ!」
「同じくアズラン!」
「「『三人揃って、「三人団」だ!』」」
やはり、名まえは考えた方がいいかもしれない。何とか三兄弟を思い出してしまった俺は、不覚にもつい笑い声が出てしまい、カタカタとアゴを鳴らしてしまった。
『「闇の眷属」? 知らんな。まてよ、まさか「常闇の女神」が復活したというのか?』
こいつ、われらが主の名前を
こういった
取った!
そう思ったが、俺の一撃は見えない壁にさえぎられた。しかも、エクシュキューショナーを通じて俺に
びっくりはしたが、電撃でどうなる体ではないので、今度はリフレクターでミイラ男をなぐりつけた。今回も壁にさえぎられてミイラ男にダメージを与えることは出来なかったが、今回はリフレクターの材質のせいか、電撃は返ってこなかった。
俺の攻撃が通用しないと見たトルシェが俺の後ろから、
『ダークンさん、いきます』
そう叫んだので、ややミイラ男から距離を取ってトルシェの攻撃の邪魔にならないようにしてやる。
俺の脇の近くを白い光がミイラ男に向けて放たれた。
久しぶりの
俺にはミイラを
あれ、また何だか体中に力がみなぎって来た。ミイラ男のさっきのは呪いか毒か何かの攻撃だったのか? バカ
「ダークンさん、さっきのはおそらくリッチの『死の
トルシェ、解説ありがとう。
今のは、いかにもな名前通り俺には快感攻撃だったようだ。
トルシェの魔法攻撃もミイラ男には効かなかった。となると、次の出番はアズランか。今アズランがどこにいるのかはわからなくなったが、ころあいを見て『断罪の意思』でミイラ男の頭を切り飛ばすつもりだろう。
ならば、俺は相手にダメージを与えることができないと分かっていても、攻撃を続けるべきだな。ようし、行くぞ!
エクシュキューショナーとリフレクターを使い、
ソーレ、ソレ、ソレ、ドンドコドンドン。
ソーレ、ソレ、ソレ、お祭りだー!
乗って来たぞー。ソーレ、ソレ、ソレ。ドンドコドンドン。
俺が気分よく太鼓をたたいていると、ミイラ男が何度も俺に向かってあの気味悪い顔を向けてくる。キモいのだが気持ちいい。キモ気持ちいいの
しばらくミイラ男の見えない壁をたたいていたら、
アズランが、ミイラ男の後ろに立っていた。
「
その言葉とともに『断罪の意思』が真横に振られ、ミイラ男の頭があっさりと床に転がった。頭の無くなった胴体も糸が切れた操り人形のように床に転がった。ミイラ男の意外にあっけないたおれ方だった。
『アズランのおかげでこいつを何とかたおせたな』
「絶対物理耐性と、絶対魔法耐性を持っていたんでしょうね。それで
『マヌケはないだろう。俺はざまーみろとは思うがな。これで、おしまいなのかな? この一連の
「どうなんでしょう」
『目ぼしい物は、そこの椅子と、ミイラ男の着ている服と棒、それと鏡くらいか。トルシェ、どうする』
「椅子は大きすぎて邪魔なのでいいでしょう。ミイラ男の服と棒それと鏡をいただいて撤収しましょうか」
『そんなところだな。アズラン何かあるか』
「ダークンさん、この鏡、私たちが相変わらず映らないんですが、持って帰って意味ありますか?」
『あれ? ほんとだ。ミイラ男をたおしたら鏡が元に戻るかもしれないと思ってたんだがな。俺たちが映らないならいらないよな』
「ダークンさん。鏡が普通じゃないってことは、もしかして、まだ、ミイラ男がどこかに生きてるってことはないでしょうか?」
『大魔王を名乗る割にそこまで強くなかったから、可能性は十分あるな』
このままだと、120分の映画で、100分辺りでボスが死んだ状況だ。あと、20分で何かが起こるのは見え見えの状態だ。
[あとがき]
最後を書いていて、ターミネーター2を思い出しました。
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