第80話 『大迷宮』10~11階層
よそさまの戦闘を見れば、なにがしかの足しになるのではと思ったのだが全くもって何の役にも立たなかった。
まあ、初めて
Aランクにもピンからキリまであるのだろうが、あれでAなら、俺のBはカスだな。
などと適当なことを考えながら、何となく道なりに通路を進んでいた。
『ダークンさん、この先に何かいます。数はおそらく4。先ほどのオークと同じ感じで呼吸していますから、オークの可能性が高いです』
俺は全く気づけなかった。やはり、
『よし、近づいて
『
アズランの『了解』の言葉が頭の中にひびき終わる前に、先頭を歩くアズランが視界から消えた。
通路の
ゴゴゴゴロン。と四つの音が重なって聞こえたあとに、
ドサドサドサドサ。と首なしオークが首の根っこから血を吹き上げながら倒れていった。
カチン! と、アズランが『断罪の意思』を鞘に納めて、戦闘は終わってしまった。
これでいいのか?
迷宮都市の冒険者たちの実力の低さに驚いたときもこう思ったが、俺たちはいったい何なんだろう。まさに、『強い!
アズランが立っているところにトルシェといっしょに駆けていき、
『ところで、こいつらの死骸は何かになるのか?』
首のあったところから赤い血をいまだに流しているオークを見ながら、
『食材としてそれなりの値段で引き取ってもらえます。あと、オークのあれは
四匹のオークの首なし死体がトルシェに収納された。頭も一緒に収納したところを見ると、あれで出汁でもとればうまいのかもしれない。脳みそを
『俺には関係ないが、強壮剤の方は予想はできたな。それじゃあ、行くか』
なんだか、アズランが俺の方を見て何か言いたそうにしているんだが、はて? 強壮剤に反応したのか? まだおまえには早いだろ。それにおまえは女の子だろ! 女でも使うものなのか?
『アズラン、どうかしたか?』
「いえ、何でもありません」
いったい何なんだろう? あっ、分かった。
『アズラン、さっきはすごかったな。さすがはアズランだ』
「はい!」
すごくうれしそうな顔をされた。これが正解だったらしい。
さらに通路を道なりに進んで行くと、またオークがいた。かなり遠方だったが今度は、トルシェが例の高速の黒い糸をこめかみに貫通させてたおしてしまった。こんどは二匹。近づいてトルシェが収納。
『そういえば、この「大迷宮」だと、罠に気づかないな。罠がそもそもないのか?』
「こういった洞窟タイプの場所にはないようですが、石組みされたような場所には罠があるそうです」
「ふーん。そうなんだ。それはそうか。こんなところに罠を作るのは作りにくそうだものな。誰が作ってるのかは知らんが」
「いったい誰が迷宮の中に罠を作っているんでしょうか?」
『罠を作る意図も分からんよな。そもそも迷宮自体、なんであるのかの方が謎だけどな』
「まあ、いいじゃないですか。新しい本拠地は快適だし。わたしなんか言うことなしです」
トルシェはそうだろうよ。
そうこうしていたら、下り階段の
『10階層もあんまり大したことなかったな』
「どんどん行きましょう」
俺たちは休憩せずそのまま11階層に下りていった。下りた先は11階層だということ以外は10階層と変わらなかった。
11階層をなんとなくわかる足跡なりに歩いて行く。
『この階層には何が出るのかな? さっきの10階層がオークだったから、こんどは、オークの上位種とかかな?』
「わたしは、こんなに深く潜ることなんか考えたこともなかったけど、確かシルバー・ファングはこのあたりですよ」
『そうか。あれもおいしいモンスターだったから、どんどん出てきてくれないかな』
今の一言がフラグになってくれればいいなと、バチ当たりなことを考えながら歩いて行くと、ちゃんとフラグを回収できたようで、通路のだいぶ先にシルバー・ファングの群れを発見した。
「ダークンさんどうします? ここから
『そうだな。めんどうだから、トルシェに任す』
トルシェが右手を伸ばす。手のひらから黒い糸が伸びて、ドタバタと前方のシルバー・ファングの群れが倒れた。
あっけなさ過ぎて感慨もなにもない。こういうのを何て言うんだろうな。
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