第7話 進化
右手の通路はまだスライムの
左手のゴブリンこん棒と右手の剣でスライムをプッチしながら歩いて行くと、通路の床の三分の二ほどを占めた不自然な個所に出くわした。普通に考えてここはダンジョンの中、不自然な床、イコール、落とし穴のような罠を連想してしまう。
試しにこん棒で、その怪しい床の部分をコンコンとたたいて見たところ、崩れて穴があくわけではなかったが、明らかに
今度は力を込めてたたいてみたら、
気付けて良かった。注意しながらその穴の脇を通り、その先に進むと、前方に明かりが見えて来た。
このダンジョンで目覚めて以来初めての明かりだ。スライムをたたきつぶしながら進むと、だんだん明かりが強くなってくる。今の自分では
その円柱のてっぺんで眩しく火が燃えているのだ。広間の壁はこれまでと同じく玄武岩のような黒っぽい石製のため、目が慣れてくると、部屋そのものはそんなに明るいわけではない。
火の燃えている円柱に何か
気になる文字なので、その文字に指を這わせてみた。
『これは、進化の
頭の中に意味のある言葉が響いた。
『進化の
つい手を放してしまったので、もう一度『進化の祭壇』に手をやると、
『これは、進化の祭壇。汝、進化を望むや?』
同じ言葉が頭の中に響いた。
もちろん「はい」だ。
『望みは
一瞬、クラっと目が回ったような気がした。
何か変わったか? もう一度『進化の祭壇』に手を伸ばして触ってみたが、あの言葉はもう頭の中に響いてこなかった。
その代り、伸ばした俺の手が黒ずんだ骨だけの手になっていた。視線を落として自分自身を見ると、俺の体からあの腐肉が消え去り、理科室の
俺はスケルトンに進化したようだ。腐肉がなくなり、改めてあの臭さを思い出してしまったが、
上から見た感じ、俺の体は白骨ではなく、骨が幾分黒ずんでいるように思える。ちょっとこっちの方が強そうに見える。気がする。
期待した通り進化できることに安心した。
この次の進化が楽しみだが、この次があるかどうかは不明だ。何もないことを
さて、スケルトン(仮)だが、能力的にはどうなっただろう。ラノベの異世界物のごとくステータス画面が開いてくれればいいのだが。
そういえば、お定まりのアレをまだしていなかった。ようし、ここには誰もいない。心置きなくできる。
「ステータス!」
ダメか。何も起きない。
「ステータス、オープン!」
これもダメか。それなら、これはどうだ。
右腕を突き出しながら、左腕の肘を引き、いっきに、左右の腕の形を入れ替える。
「プロパティー!」
やはり、ダメだった。
待てよ。よく考えたら、俺には肉がない。どういう理屈で周りが見えているのかわからないがそれは、ファンタジーの特有のご都合主義的何かのおかげだと思おう。
しかし、
考えても仕方がないので、あれもこれもすべてファンタジーの特有のご都合主義的何かのおかげで片付けておくしかない。
それで、進化した俺は見た目以外に何か変わったのか?
少しその場で、ジャンプしてみた。
? 少し高く飛べたか? よくわからん。
剣を振り回してみた。
? 風切り音がするようになった? よくわからん。
進化と言っても、あまり大したことはなかったのか? そんな気もする。
しかし、腐臭がなくなったのは大きい。これで、自分の臭いを気にすることなく、不意打ちも可能になるかもしれない。
それに、あのぐちゅぐちゅに湿った腐肉がなくなったことで、衣服を着ても、それほど動きは
必ず見つけてやるぞ。
少し前にたおしたゴブリンは腰みのをつけていた。どこかに繊維でできたものがあるはずだ。探索継続すべし!
『進化の祭壇』を回り込むと、その先にはまだ通路が続いているようだ。また新しい発見があるかもしれない。少し先まで行ってみるとしよう。
通路に入ると、先ほどの広間ではいなかったスライムがまた目に付くようになってきた。こいつらの生態系はいったいどうなってるんだろう。ふだん何か食べているんだろうか? やはり、俺と同じように何も食べることなく生きてるんだろうか? いや、俺自身は生きているのか死んでいるのかわからないがな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます