第47話 四条がパーティーにソシャゲの期間限定イベントキャラの如く正式加入するそうです。




 オークとグールの乱戦状態のなか命からがらなんとか校庭まで辿り着いた。四条がオークを誘導してくれたおかげで、校庭にはモンスターはいないのが救いか。


 道中は本当に大変だった。

 オークさんに何本か鎖を引きちぎられるし。そもそも鎖って引きちぎるものでしたっけ?


 まぁ、でもオークの集団とグール達が上手いことぶつかり合いになったことは本当に幸運だったと思う。


 逢魔は御愁傷様だとは思うけど、そのお陰で僕らはノーマークで逃げ出すことが出来た。


 体に目を向けるが特に破損した箇所もない。


 五体満足万歳。


 肩で息をして地べたにそのまま仰向けで寝転がる斎藤と四条も同じく特に怪我は無さそうだ。



 なんとか全員無事に生きている。生きてて良かった……。



「ははは……」


 自然と笑いがこぼれだした。



「ふふふ……」



「あははは……」



『あはははははは!!!!!』



 気がつけば全員笑っていた。


 そりゃそうだ、あんなに滅茶苦茶なことがあったのになんとか生きてるんだからそりゃ笑っちゃうよね。


 いつも女帝とか裏で言われて、しかめっ面な斎藤ですら苦笑を浮かべているのだ。



「いや今回はホントにやばかったね。まさかオークの大群が襲いかかるなんて夢にも思わなかったよ」



「そ、それは、悪かったわよ!! まさか、誘導してきたオーク達がほとんどあたしのこと追うとは思わないじゃない!」


 あれかな、やっぱりどの世界でも女騎士とか女戦士はオークに人気があるのかもしれないよね。


 くっころくっころ。



「それで、四条さんはこれからどうするのかしら? 本格的に生徒会長と敵対しちゃったみたいだけど」



「うっ。そうだよね……もう、彼処にはいたくないかな……妹も探さないといけないし。悠君のことは気にならないと言えば嘘になるけど……それでも、彼処はなんというか不気味なの」



「それに……もう、彼処にはいられないと思うから……」



 四条の表情に影が走る。


 あれだけ悠君とやらを気にしていたのに少し意外だった。


 斎藤が言っていたいざこざが原因なのかな?


 まぁ人の心なんてコロコロ変わるしな、ほんと。本人もこう言っているわけだし、あんまり気にしてもしょうがないか。



「なら私達と一緒に来なさい。正直そこのろくでなし一人だと戦力的に不安なの。貴方が居てくれるととても心強いわ」




 ひでぇ。

 まぁ確かにいるとかなり助かるんだけどね。

 まともな前衛職がいないし。

 ほら僕は紙っぺらですしおすし。




「アーちゃん……うん! ありがとう!! そうする! する! 絶対する!!」


 感極まって目尻をうるうるさせた四条はもう我慢出来ないと言わんばかりに斎藤に抱きついた。


 わぁ、百合百合。



「ちょ、ちょっと四条さん! ……あまりくっつかないでくれると……その恥ずかしいわ……」


 頬を赤らめて徐々に語尾が小さくなっていく姿は……その、悔しいけど可愛く思ってしまった。


 普段が女帝みたいな感じだからギャップがね……。

 凄い威力ですよ……。



「あ、そうだ。北原もありがと。一応礼は言っておくわね」



「お、おう」


 いきなり話しかけないでよね!

 コミュ障なんだからどもってキモイ感じになったじゃん。


 後で陰口と言われないよね?



「あら、何かあったのかしら。正直そこのそれにあまり気の効いたことは話せると思えないのだけれど」


 いや、そんな微笑を浮かべて言われても……


 しかも、それ呼ばわりだし……


 言葉の辛辣さと表情の穏やかさが正反対すぎて一瞬思考が麻痺したわ。


 何この子。人のこと罵倒しないと会話できないの?



「あーまぁね。こいつも一応勧誘してくれてたの」


 あーあの夜のことか。そんなこともありましたね。


 まぁ振られたら来れば?

 とかいう内容だったから確かに気はきいてないですね、はい。



「あら、北原君意外と手が早いじゃない。貴方プレイボーイの素質あるわよ」


 何それ。うれしくねー。



「うわっ北原の癖にプレイボーイとか……」


 いやドンびくなよ。


 自称すらしてないのに傷つくでしょ……。



「あー、もういつまでこんなことろにいるつもりなのさ……」



 このままだと延々に僕の駄目だしをするという闇のゲームが続きそうなので流れを断ち切るように立ち上がった。




「それもそうね。さっさとこんなところ出ないと未来がないわ」


 斎藤と四条はスカートについた砂ぼこりをパタパタと叩いて落としながら立ち上がる。こういうところは女子らしいよね。



 さて、やっと学校から出れる。



 これからどうするかとか外の世界がどうなっているのかと思いを馳せようしたが、現実はそうは問屋を下ろしてはくれない。


 こう現実は僕に理不尽だよね。


 僕のこと嫌いなの?


 ちなみに僕は現実君のこと大嫌い。




「ーーいいや、君達に未来なんてないよ」



 振り向くと、そこには理不尽な現実を押し付けるかのごとく逢魔が立ち塞がっていた。


 表情はにこやかな笑みを浮かべている筈なのに、決して笑っているように思えない。



 つまり、とてもお怒りな生徒会長様がいらっしゃった。

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