第46話 オークさんはくっころがお好き

 彼女は物語のヒーローよろしくマントのごとくツインテルールを風になびかせ、その鮮烈な存在感を露にさせる。



「待たしたわね!!」



 彼女はニカッっと擬音が聞こえてくるような不適な笑みをここぞとばかりに浮かべている。


 あれ? あの子あんなキャラだっけ?


 頬が凄い上気している。気が乗ってるのかな。


 まぁ、こんな満を持したような登場すればテンションが高くなるのかもしれない。


 ていうか僕ならなる。



「おや? 四条君じゃないか。また行方不明になったと聞いて心配していたよ。無事で何よりだ」



「白々しいわよっ!! アタシにあんなことしようとして!!!」



 眉間にシワを寄せて鬼のような形相で激怒する四条。


 それよりも……あ、あんなこと?

 あんなこととはどういうことなんだろうか。

 あんなことってあんなこと?

 いかがわしいタイプのあれですか。ちょっと詳しく教えて頂きたい所存ですなぁ。



「北原君、あまり下卑た顔浮かべないの。みっともないわ」



 え!?


 顔に出てた?

 なんかごめん。童貞だもんしょうがないよ。でもごめん。



「そ、それよりも! 四条さんっていいの? 一応生徒会長側じゃなかった?」



「貴方がいない間に色々いざこざがあったみたいよ。それに貴方の理不尽な処遇に彼女なりに思うところがあるのよ」


 呆れたようにため息を吐きつつ説明してくれる斎藤氏。かたじけねぇ。



「? まぁ、いいや。正直この状況で彼女がいるのは心強いよね。これなら……」


 これならゴミカスレベルではあるが希望が沸いてきた。


 やはり壁役タンクがいるのは強い。



「あの……格好よく登場して悪いんだけどさ……ごめん!」



 え? まさかの裏切り?


 もしかしてやっぱり生徒会長側につくとか?


 まぁ元々ハーレム員ですしね、君。



 と思ったら四条は僕らの間をゴールテープのごとく駆け抜けて過ぎ去っていった。



 え?



 少しはなれたところで急ブレーキーをかけて彼女はくるりと振り向いた。


 頭にコツンと手を当てて舌をペロリと出す動作を付け加えて。


 それいる?

 いや、可愛いんだけどさ。



 ええ、不穏な空気が……。


 普段ツンツンしてる四条氏がそういうことするとこうなんか不安感が拭えない。


 ちらりと斎藤に視線を向けると眉間を歪ませてものっそい怪訝な顔してるし。





「オーク達が私のこと追ってきてるの★」



「.....」

「.....」


 ふざけんなああああああーーー!!!!



「あわわわわ!!!」


 嘘、ほんとに来たじゃん!!


 四条さんが登場した通路からわらわらとオークが『ぶもおおおおお』とかやばい唸り声あげて溢れだしてきた。

 でかい! でかい! 無駄にでかい!


 あれ、僕が戦った時より凄い興奮してない?

 あれか発情期か。



 あぁ、そういえばオークは女戦士とか女騎士とか大好きとかいう話ありましたね……くっころか?

 くっころなのか!?



「予想外だわ……あそこまでのオークが……しかも四条さんに彼処までご執心してしまうなんて……」



 斎藤は困ったように額を押さえる。僕も頭を抱えたい。


 そりゃそうですよね、援軍だと思った人がオークの大群連れてくるんだから。



 ……


 …………


 ………………




 に、逃げろーーー!!!

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