第44話 ネクロマンサーって根暗マンサーに空耳すると思うの。しないか。



「ネクロマンサー? そんなのジョブの欄に出なかったけれど?」



規格外職業エクストラジョブってやつかしらね。神とやらに寵愛を与えられた者のみが使えるものだよ」



 斎藤の問いに逢魔はどこまでも恍惚としている。

 彼女の挑発的な笑みは言外にお前らとは格が違うと言っているようだった。


 いや、絶対そう思ってるでしょ。もう存在からして驕りの塊にしか見えない。


 しかし、驕るのも致し方ないと思えるようなジョブでもある。



 しかしエクストラジョブか……やっぱりあったか。



 RPGとかには往々にして特別な人間だけがなれるという特殊なジョブが存在したりする。


 そして、そのほとんどが強大な力を持つパターンが多いのだ。



 あれ?

 よくよく考えたら僕の詐欺師も一応エクストラジョブになるのかな。思い返せば斎藤や四條のジョブ選択画面にはなかった記憶がある。



 でも、ステータスの補正値なんかスピード特化で紙装甲だし、スキルも正直地味だぞ。




 ……




 まぁ、あれか。悲しいことにエクストラジョブの中でもあたり外れがあるわけね。



 ええ……くそじゃん。



 だってほら、ネクロマンサーなんか凄い当たりジョブじゃない。



 グールをあれだけ操れるなんか規格外チートだ、規格外チートだ。



 ずるい。やりたい放題じゃん。



 逢魔一人で大軍隊を持っているようなものだ。使い方によれば都市を落とすことだって可能なはずだ。



「ネクロマンサーは君達の常識を遥かに越えるそんざいなのだよ。ほら! このようにね!!」



 どこから現れたのかゾロゾロと廊下に溢れかえるグール達。文字通り陰湿な墓場から這い上がるリビングデッド。



「はぁ!? 限度があるでしょ……」


「流石にヤバイわね……この数の敵は捌けないわ……」



 ステータスの恩恵により、上昇した身体能力を持つ僕らからしたらグール数体、いや数十体を倒すことは容易だろう。


 しかし、それが100体だったら?200体だったら?



「ええ、まさに絶体絶命ね。まさか、生きているうちにこんな言葉使う日が来るなんて想像つかないわね」



 あれ?

 斎藤さん割りと余裕っすね。何か秘策とかあるの?



「いえないわ。そもそも生徒会長があそこまで強力な力を持ってるなんて予想外だもの」



「ええ、やっぱりダメじゃん」



「えぇ。だから私たちにやれることはひたすらに戦って、諦めないことよ」



「根性論じゃん……根性論苦手なんだよなぁ。だってほら、ボロボロになるまで頑張らなきゃいけないじゃない?そういうのはウェイ系に任せるよ」


 ほら、陽キャのチャラ男ならなんでもウェイで乗りきれるんでしょ。 


 凄いウェイ。流石ウェイ。



「そのゴミみたいな戯言を私の脳内に入ったこと事態が恥だわ」



「え?僕の人生で美少女様に恥をかかすなんて出来事があるなんて。これ字面だけみるとあれだね。なんか悪くないね」



「北原君ーーつべこべ言わずに手を動かしなさい」



 ひぃ!


 出たよ女帝の眼光。もうスキル扱いでいいんじゃないのそれ!


 それぐらい怖いんですけど!!


 いや! ずっと動かしてますって!


 ブラック企業の奴隷社員並みに動かしてるもの。


 過労死する!助けて労基!


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