第10話 学年一のアイドル視されているレベルの美少女に認知されてたら陽キャの仲間入りだろうか? 違うか。違うな。
「くっそ! 覚えていやがれ!!」
そう言って彼らは気絶した同級生を抱えて、すたこらさっさと去ってしまった。
あまりにも古典的というか、お約束な逃走するものだから思わず拍手。普通そうはなんでしょ。もはや、芸術の域。
「助けて……くれたでいいのかしら?」
あっ、やっべ。
この子の存在忘れてた。
振り替えると襲われていた美少女が一人。
彼女、斎藤アリスは強引に脱がされたかけた服を着直している。なんと言うか、その仕草に申し訳ないがエロスを感じる。
いや、仕方ないじゃん。こちとら、思春期真っ盛りの男子高校生だからね?そんなこと不謹慎だとか言われても無理なものは無理だから。むしろ、一糸纏わぬ姿よりもこういう趣向の方がより良く見えるのはなんでなんだろね。
て、やば。なんも返事してない。これじゃ、半裸の女子を見る変態さんだ。ともかく、なんか言わなきゃ。
「……あ、はい」
しかし、やべーよ。どうしよ、普通の女の子ですら駄目なのに、強姦されかけた女子と会話するようなコミュ力なんてないんですけど。しかも、美少女だし。
「そう、ありがとう。おかげで舌を噛みきりたくなるような恥辱に遭わずにすんだわ」
「あ、そうですか」
僕は文頭に「あ」をつける呪いにでもかかっているんだろうか。
ていうか、無理でしょこれ。何言っていいか分からない。
こんな目にあった女子にかける言葉なんか持ち合わせてないし、そもそも僕はコミュ障なのだ。
女子とまともに会話した記憶なんて、何年も前な気がする。
「貴方は……私を襲わないのかしら?」
問いかけるかける彼女の表情はとても固く見える。
そりゃ、そうか。彼女は今しがた男子達に襲われたばかりだ。助けられたとはいえ、同じ男である僕を警戒しない理由はない。
「コミュ障で、苛められてた僕にそんなことする度胸あると思う? ムリムリ」
ほんと、むりむりカタツムリ。
「そう……」
彼女の返答はどうとも取れるようなものだった。安堵したのか、それとも諦めを含めたものなのかは正直分からない。
「北原君、この世界はどうなってしまったのかしらね?」
ーーーー
「北原君、この世界はどうなってしまったのかしらね? それに貴方の力、少し異常さを感じるわ」
「あ、名前覚えられていたんだ」
そこにまず驚きだよ。あれ、トップカースト様に覚えられてるとかもしかして、僕リア充?違いますね、はい。
「ええ、一応。もしかして、恨んでいるかしら? 私は貴方の現状を知りつつ、何もしなかったのだから」
「あーそういう」
少し考える。
虐めをしてきた奴らはもちろん憎い。復讐しようと思っているぐらいには憎い。周りにいてニヤニヤ眺めていたり、何もしなかった連中だって、正直嫌いだ。
しかしだ。しかし、加担者でもない彼らに責任を求めるのはどうだろうか。
「いや、そこまでは。結局のところ、僕が強くないといけないだけだしね」
つまるところは弱さは罪だ。弱いから見くびられ、貶され、追いやられる。
もし誰かが助けてくれたとしても、いつかは同じ目にあう。
なら、僕が強くなるしかないのだ。
幸い強くなる方法は知れた。この
「そう、強いのね。いえ……強くなったのかしら?」
「もしかして、この変わった世界の仕組みに気づいてる?」
「ええ、あくまでも推測だけどね。あんな物語に出てくるような架空の存在が現実に出てくるなら、貴方の力も何かの影響のものと考えても可笑しくないわ」
「へぇ……」
流石才女、理解が早い。
「どうなのかしら?」
「おーけーおーけー、降参だよ。まぁ、元々隠すつもりもなかったけどさ。そう、君の推察通りこの世界は本当にRPGなったみたいだよ」
ーーー
「……というわけだ」
コホンと咳払いをして説明を締めくくる。
これで斎藤に、僕が現時点で知りうる情報を伝え終わった。
斎藤はRPG自体にあまり詳しくないようで、中々説明に苦労した。
そりゃ、女子はあんまりRPGなんてやらんよね。
「…………」
ああああああああ!!!!
そんなことより!恥ずかしい!穴があったらはいって冬眠したいレベル。
というのも、ここぞというばかり僕のマシンガントークが炸裂。美少女だから喋りたいとかそういうのじゃなくて、話す話題が無さすぎて沈黙がつらいの。だから、斎藤も知りたがっている今の状況を必要以上に懇切丁寧に説明している。
思い出すだけで、僕キモいなぁ。
「…………」
そんな僕の心境を露知らず、斎藤は流石にショックを隠せないのか俯いて沈黙してしまった。
当然何考えてるか分からないし、もし落ち込んでるなら僕にフォローなんていうイケメンチックな行動は無理なのだ。でも、イケメンは滅べばいいと思います。
やがて、斎藤は何か決意したように顔を上げた。
「北原くん、私に戦い方を教えて欲しい」
彼女の瞳はどこまでも真っ直ぐで、目を逸らしたくなるほどだった。
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